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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「サスペンス劇場 幽体離脱」 最終話

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その存在は聞こえる声ではなく、全体で感じられるような感覚で理解できた。

話しかけてきたのは男性でそれも老人に見えた。

「修平、こんなに早くやって来るとは思わなかったが、それもお前の運命だろう。おれはここの氏神様を守っている霊だ。そろそろ交代して欲しいと思いお前に幽体離脱をさせた。今は1時間ほどだが、戻る身体をなくせば永久に今の状態で居られる」

「交代して欲しいとはどういう意味なんだ?」

「おれはこのままここにいると天国に行けなくなる。氏神様を守ることは我々限られた霊が代々引き継いできている大切な役目だが、それも永久にというわけにはゆかない。ふざけて心霊体験をしようとしたお前に罰を与えたのではない。お前の霊魂を見込んでそうしたのだ。現実にすぐに母親を助けたように、高い能力があるんだ」

「おれにここを守る霊となれということなのか?もう元の身体に戻れなくなるというのなら、それは断る。確かに眠るたびに幽体離脱することには嫌気が差している。しかし、このまま霊としてしか生きられないとしたら、それは悲しい。何の楽しみもなくなってしまう。違うか?」

「やがて人はみんな肉体が滅びて霊魂の世界へ来る。幽体として現実の世界と行き来できることは我々だけに与えられた特権だ。なので、やがてゆく天国には高い地位と大きな喜びが感じられることが約束される」

「にわかに信じがたいことを言うな。自分の都合で止めたくなったから、おれに代わりをやれということに上手い理屈をつけているとしか感じられない」

「なるほど、そう思うのは無理もないな。おれだって譲られたときは憤慨したものだ。しかし、ここまで来て不幸だったとは思わないぞ。まず幽体の状態では病気も死もない。それは何となく解るだろう?」

「だったらなぜおれに代われというんだ?」

「上の世界の方がもっと素晴らしいからだ」

「じゃあ、勝手に行けばいい」

「行けるものなら既に果たしている。おれには戻る肉体が無いから上の世界へ行く資格がないんだ。肉体が滅んで魂は天へ上がる。幽体でいることはその途中で浮遊している状態だからダメなんだ。お前の肉体におれが宿り、自分で自殺する。それによりおれは上に行けるのだ」

「待て!自殺すると言ったな。そんなことは許さないぞ。ここに眠っているのはおれ自身なんだから、勝手な真似は許さない」