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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「月ヶ瀬」 第二十話

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容子の思いは初江の思いに符合した。

「まだ発見されていない由美さんの安否が気になります。笠置旅館にいた高木という人の行方も知れへんし。どんなに悪い人でも死んだらあかんと思います。ちゃんと出て来て全部話して罪に服すのが人としての行いです。思い出したら弟は13歳の実智子さんを強姦して殺害しました。そのせいでうちと両親、妹はどんなにつらい思いをしたか・・・あの時のことが尾を引いて、お前に申し開きする資格なんかない!って言われ続けたけど、極悪人にも親が居て兄弟がいて妻が居て夫がいる。罪のない人のことをいつまでも苛めるのは悲しいことやし、村ぐるみでそういうことをしてるのは犯罪やと思いました」

「そうやな。夫が目覚めてくれてこの村を変えてくれた。それも初江さんの強い気持ちがあったからやろう。和田さんの命は帰ってけえへんけど、二度とこんなこと起こしたらあかん。うちらに出来ることは、村のみんながよそ者を毛嫌いせずに受け入れることと、新しく出来るやろう温泉施設から村が開かれた地域になることを支援することや。いつでもええからここに帰って来てや。嫌な思い出ばかりやろうけど、初江さんにはうちら久保夫婦がこれからは親戚や」

「容子さん・・・おおきに、今度は子供連れて温泉が出来た頃に来ます。もう大きいけど、家族みんな仲がええことだけは自慢なんです。久保さんも東京に来られたら必ず声掛けてください。泊まってゆきはったらええし。狭いけど家買いましてん。夫はうちのこと全部知ってはるけど、ほんまに優しい人やし頼りに出来る人ですねん」

「幸せそうやな~ええことや。うちもなこの人のこと浮気しとるって疑っとったけど、今は仲ええねん。恥ずかしいことも出来るようになったし・・・なんちゅうこと話してるねん、ええ歳して、ごめんな」

「ハハハ~ええですよ。夫婦はそういうことしなあかんもんね。ちょっと家空けてるから、帰ったら甘えようかな~」

「そうしい、また子供作ったらええ。まだ若いし」

「何言うてますの・・・下の子が高校生なんですよ」

「そうか、結婚はやかったんやな・・・事件のことはどうなったか知らせるわ。また会える時まで元気でな」

久保三津夫と容子はいつまでも玄関先で手を振って初江を見送っていた。
JR関西本線月ヶ瀬口駅から電車に乗って伊賀上野~亀山~四日市~名古屋と乗り継いで、新幹線で東京に向かった。