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もやもや病 4

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31 大学病院は行き止まり

例えば、私の次男のことを例にして
次男は、小児科医で自家中毒と診断され
引っ越した先の総合病院で、てんかんと診断されて
抗けいれん剤を4年間飲んでいて
10歳の時に脳室内出血で倒れて、もやもや病がわかった

総合病院では、てんかんの他に、もしかしたら代謝異常ではないかと、筑波大学病院に回された

ある日、廊下のベンチで待っているとき、女医さんが通りかかって

「あなた絶対どこかお悪いから、よく診ておもらいなさい」と声を掛けてくれた

その先生こそが、後で知った、脳波を読むのにたけている先生だったという
その先生に脳波を見てもらっていたら、脳出血になる前に、これはてんかんではないと思うという診断がついていたのではないか、そうしたら他の病気のことを考えていたかもしれない

そして1年近くかよって、代謝異常ではないという診断が出て、元の総合病院に戻るようにということになった

家の場合は行き止まりではなく出戻りだけれど

多くの患者さんは例えば子どもの場合
小児科→総合病院→大学病院
というのが普通のコースだと思う

TIA一過性脳虚血発作などと言うことを、医師でも無く、身内にその患者が居ない限り親や家族がそこに気がつくなどということはほとんど無い

まだ病気が良く知られていない頃は
顔がゆがんでおかしいと連れて行った親に、TIAは数秒から、1時間ぐらいとその症状が出る時間が様々で、待合室で待っている間に元に戻ってしまっている子どもの顔を先生に見せても
お母さん育児ノイローゼじゃないの?
と簡単に言われたりしたものだ

小児科に行くより脳外科に行こうなどと思う訳もない
だから最初の所の小児科医がもやもや病を知っているかどうかはかなり大きい影響になる

ここではわからないから大学病院を紹介しますと、脳外科に回ったとして

もやもや病を、数人しか診ていない医師に、今後の診療計画が出来るものではない

今は元気そうだから、じゃあ、しばらく様子を見ましょう
という対応

それとも、検査を全部してみることで時間が掛かる
そして検査をした後、様子を見ましょう・・・という場合もある

あるいは、手術をさせてくださいと言うこともある治らないという難病に、とりあえずの手術をしてみたい
脳外科は切ってなんぼの科なのじゃないかと・・・
この大学病院では症例が少ないから是非、症例の多い病院に行ってください、紹介状を書きます・・・とは言わない、おそらく

病院に慣れていない患者家族は、もしもそんなことを言われたら、この病院から見放されたと思うのではないかと、そういうこともあるかもしれないけれど

何のためのインフォームドコンセント・・・
脳外科学会だって有るのだから、そこでこの病気のことを聞いたことがないと言うことはないだろう

患者会は患者をみんな他の病院に連れて行ってしまうから、だから症例が多くならない・・・そういうこともあるかもしれない

でも、先生にとっての患者の位置と、患者の本人も家族もたった一人の大事な患者という位置、試しに手術をしてもらうことは出来ないし、自分の家族で練習にしてもらっては困る

大学病院まで行ってしまえば、私も経験した、代謝異常じゃないかと言われた後、大学病院にも行ったのだからという自分への言い訳が出来てしまう

ここで患者会の存在を調べて欲しいし、看護師さんや先生に患者会のことを教えてもらえたのなら遠回りしないですむ患者は多くいたのではないかと思う

うるさい患者は治る・・・というらしい
それは自分でも調べて、先生に質問して、先生の言いなりに、なんだかわからないけど、はいはいと言うだけの患者ではなくいるということ
大学病院に行ってその先生が様子をみましょうと言っているのだからこれで良いのだというのは、この病気には当てはまらない

もやもや病の手術にたけている先生は10人と書いた
それでその10人の先生の所に患者が全部行っているわけではない・・・当然

患者会の会員は、1200人、患者会の会員というのはどこでもだいたい総患者数の1割ぐらいというとこらしい

その患者の周りの人には口コミでどこの病院と伝わることもあるかもしれないけれど
患者会の存在すら知らない人も多い

目の前の病院にどういう形であれお世話になって、難病です、治らない病気です、と言われたら
この先生にずっと診て戴こうと思うこともあるだろう
迷いがなければ、他の病院には行かない
不信感さえなかったら患者会への問いあわせも、違う病院に行ってみようと思うことも少ない

そういう方々が、じゃ、どんな手術を受けているかというと
ネズミの細い血管で訓練する暇など無い先生方は、簡単な方法としての、関節手術をすることになる

血管と血管をつなぎ合わせるのではない
頭の皮の方にある血管を頭蓋骨をあけてその脳の表面に、頭皮からの血管を置いてくるという手術
置いてきた血管は、血流の少ない方にぐーんと伸びていって血流を補おうとするらしい
その手術がEDASというもの

これは、東京医科歯科大学にいらした松島善治先生が考案された術式で、松島先生の手術はとても良かったと聞いている・・・(先生は、もう何年も前に退官されている)
これでどのくらいの患者さんが助かったことかと

私の次男は、茨城県の田舎に住んでいて脳室内出血で倒れたから近くのメディカルセンター病院で、出血の処置をしたまま、EDASの手術へと進んだ

このEDASをしてくださった主治医が、今も診て戴いていて26年になる

この間接の術式は直接松島先生の手術を見て勉強しなくても資料を見てまねることが出来るものなのだと思う

関東一円この手術の方法がされることになった
この手術によってある程度の血流が補えるようになったことも事実だけれど、伸びたい血管のそれは、患者本人の血流の欲しいところにちゃんと届くかどうかと言うと、それはある意味、運のような場合もあったのだと思う

この手術よりもっと簡単なのが
バーホールと言って、頭蓋骨に2センチぐらいの穴を5個とか6個とか開けるもの

関節手術の考え方は
人間の頭はどこかに傷を付けるとその傷から新しい血管が生えてくるというようになっていて
その力が有るのなら、血管が詰まって血流の悪くなったところに間接的に傷を付けてやれば新しい血管が生えてくるということを見越しての手術で

だから穴を開けるだけでも有効なのだという

ただ血管が伸びることには時間が必要で、半年から1年は、もやもや病が見つかることになった症状が消えないことになる
1年経って生えた場所によっては例えば学力のためとか情緒の面で欲しかったと思うところ、前頭葉とかに血液が届かないと言うこともある

考案された先生は成人も有効だとお話しされたが、多くの医師が成人には子どものように血管を伸ばそうという力が弱いように思うと伺ったことがある

子どもは跳んだり跳ねたりする身体を動かすことに重点が行く、けれど成人は特に身体を動かすためのことではないという違いもあるのかもしれない
作品名:もやもや病 4 作家名:とことん