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てっしゅう
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「月ヶ瀬」 第十八話

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容子の言葉に改めて佐藤は和田がもうダメだと思うようになった。

「そうや、もうあかんかも知れん。せめて清一と高木を捕まえて吐かせな警察の威信にかかわる。どんなことでもええから協力してや。こんだけ秘密事項話したんやから」

「助けてくれはったお礼に何でもします」

心から久保容子はそう佐藤に返事した。
パトカーに乗って奈良県警まで行き、その日は佐藤と共に取り調べを受けた。
夜中になって夫の三津夫が迎えに来た。
憔悴した妻の顔を見て自分が傍にいなかったことを強く反省した。

「すまんかったな。おれが悪かった。謝って済むことやあらへんけど、もうあそこは辞めて家に居れ。おれが守るさかいに、安心しろ」

夫の力強い言葉に容子は涙が出た。
佐藤が近づいてきて話す。

「そうやで、夫婦はいつも一緒に居らなあかん」

「刑事さん、ほんまにおおきに。妻を雇ってくれた清一さんのこと恩人やと思ってたけど、何ということをしおるんや。許されへんから絶対に捕まえてください」

「ご主人は役場に勤めとったね?何か聞いていることとかあらへんか、先輩とかに」

「役場の中は清一さんの息がかかっている人たちばかりやから・・・」

「あのな、清一は村長やった時に使い込みしとるねん。会計に聞いて調べてみて欲しいねん。拒否しよったら強制捜査すると脅し。その時に悪さしとったことが知りたいねん」

「はい、わかりました。何でもやりますよ。こうなったらクビになってもかまへんから、膿出さなあかへんって思います」

「ええ心掛けや。明日直ぐに頼むわ」

三津夫は重要な情報をこの後持ってくる。
しかし、その前に悲しい結果が佐藤の元に入る。

村の南側を流れる五月川渓谷に水死体が上がったと翌5月16日午後県警の捜査員から報告があった。
死体には何かがくくり付けられていた跡があり、検視結果から重しがロープでくくり付けられていたのではないかということであった。
川底の流れが速かったことでロープが弛み重しが外れて遺体は浮いてきたと思われる。

駆けつけた佐藤の前に置かれた無残な姿は和田保だった。

「こんなん奥さんに見せられへんやんけ、和田・・・無理したらあかんってあれほど言っといたのに・・・敵とったるさかいに成仏しいや」

県警に運ばれて安置室で妻と妹の山崎静子と調査依頼者の安田初江が対面する。
ある程度諦めかけていたとはいえ、目の前の姿を見ると悔しさと行き場のない悲しみが襲ってくる。
車椅子で友和も駆けつけた。
言いようのない悲しみの中で言葉を佐藤は掛けた。