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続・赤鼻のトナカイ(掌編集~今月のイラスト)

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「……あの時はありがとう……」
「あの時って?」
「クリスマスパーティでコートを掛けてくれたこと……」
「ああ、あれ? だって由紀ってすげぇ恥ずかしがりじゃん、それでも一曲踊ったんだから充分だよ」
「私が全然踊れないのをフォローしてくれたし……」
「あれはだって、俺もビンゴでビリだったからさ」

 しかし、由紀は知っていたのだ。
 それを知ったからこそ、思い切って達彦を食事に誘ったのだ。
 食事と言ってもファミレスだが……。

  ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪

 パーティの翌日の事、由紀はパーティでビンゴの助手をしていた指宿樹里から電話を受けていた。
「由紀のミニスカサンタ、可愛かったよ」
「やめてよ、すごく恥ずかしかったんだから」
「でも男共は悩殺されてたよ、由紀すっごくスタイルいいから」
「ガリガリで魅力ないでしょ?」
「わかってないなぁ、女子はみんな憧れてんだよ、由紀みたいなスタイルだったらどんなに良いかって、あたしなんかいくらダイエットに励んでも到底ムリだもん、ムリすぎて目標にもならないけどさ、アハハハハ……」
 そのあけっぴろげな笑いに、由紀もクスリと笑い、樹里はその瞬間を逃さなかった。
「達ちゃんさ、わざとビリになったんだよ」
「え?」
「みんな知ってるのよ、達ちゃんが開けられる数字開けないでわざとビリになったのをさ、あたし、近くにいたから見ちゃった、本当は最後の方で15が出た時、達ちゃんもビンゴだったんだけど開けなかったのをね」
「なんで?」
「なんで? って……由紀を庇おうとしたからに決まってんじゃん」
「……なんで?……」
「もう! 純粋って言うかニブいって言うか……由紀が好きなんだよ、きっと」
「……そう……なの?」
「そうに決まってるって! 由紀はどうなの? 好きな人いるの?」
「別に……」
「別に……って……なんか調子狂うなぁ……達ちゃんはどう? お調子者だけど優しいし、良く気がついてマメだよね、顔だって……まぁ特別良くはないけどまあまあじゃん」
「うん……」
「ここは大人の女としてお礼に食事位誘わないとね、どうせ向こうが払うだろうけどさ」
「手紙書こうと思ってるんだけど」
「何とレトロな……由紀らしくて悪くないかも知れないけど、直接会うほうが良いに決まってるじゃん」
「……そうだよね……」

 と、まぁ、こんな会話があったのだ。

  ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪

「指宿かぁ……確かにビンゴの時手伝ってもらったっけ」
「わざとビリになったのって本当だったんだ……」
「そこまでばれてちゃしょうがないな、指宿の言うとおりだよ、後二人になっても由紀が残ってたからさ、ビリになったら可哀想だと思って……あの逆ビンゴ考えたの俺だし」
「でも、他の女子だったら?」
「わざとビリにはならなかっただろうな」
「どうして?」
「……やっぱ、由紀にはちゃんと言葉にしないと通じないんだな……好きなんだよ、由紀が……つきあってくれないか?」
「だって、私、ガリガリのギョロ目だし……私でいいの?」
「何度も言わさないでくれよ、俺ってお調子者って思われてるけど、実は中学までは引っ込み思案だったんだ、高校に上がる時って同級生の面子がガラッと変わるだろ?それまでの自分から変わりたくてわざとお調子者演じてたんだよ、それがすっかり地になっちゃったけどな、だから由紀の気持ちも良くわかる……俺は由紀がいい、由紀が好きだ、付き合ってくれるよな?」
「……うん……」

  ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪

 指宿樹里……指・宿樹・里……ヤドリギ。
 クリスマス、ヤドリギの下では女の子は男の子のキスを拒んではいけない、という言い伝えがある。
 もし拒むと翌年は結婚できないとも言うし、ヤドリギの下でキスをしたカップルは幸せな結婚をするとも……。

  ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪

 はてさて、指宿樹里とは何者なんでしょう……?
 実は彼女は高校の卒業生名簿には載っていないのです、それなのに彼女と会うと、皆がクラスメートだったと信じて疑いません。

 まあ、彼女は何百組、何千組ものカップルの橋渡し役を演じて来ているとだけ明かしておきましょうね(^^)

 彼女の次のターゲットはあなたかも……。