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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「かぐや姫」 最終話

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「かぐや、帰って来たのね」

「お母さん、直ぐに戻らないといけません。これまでの世話とたくさんの愛情をありがとうございました。翔くん、お母さんの言うことを良く聞いて助けてあげてね」

「お姉ちゃん!何言っているんだよ。どこへ行こうとしてるの?」

「やらなければならないことがあるの。詳しいことは言えないけど、ここでお別れしたい」

「今日一日泊まって家族最後の時間を過ごせないの?」

「すみません。急ぎますのでお許しください。お父さん、これまでのことは一生忘れません。お元気に過ごしてください。これは司令官から渡されました。どうしても苦しい時に中を開けてください。メッセージを書いたタグを付けておきます。ではお願いされたことを実行します」

「かぐや・・・身体を大切にしなさい。父と母の記憶がある以上、ずっと傍にいると感じていて欲しい。記憶が無くなっても父と母には変わらないからな」

「あなた、記憶がなくなるってどういうこと?」

「知らなくていい・・・じゃあ、頼むよ。いつまでも未練を引きずるのは良くない」

おれは強くかぐやをハグした。かぐやは涙を見せた。
手に持っていた装置のボタンを押した。一瞬辺りが明るい光に包まれて耳を押さえるような甲高い発信音が聞こえた。
かぐやはその場を去った。上空の連絡船に信号を送り降りてきたエレベーターに乗り、十二年育った自宅を見ながら頭を深く下げた。

「美加、翔、どうしておれたちここで立っているんだ?」

「そうね、変ね。誰か来る約束でもあったのかしら」

「不思議なこともあるものだ。中へ入ろう」

「あなた、手に持っているもの何?」

「ええ?これか・・・知らないものだな。お前がくれたんじゃないのか?」

「知らないわ。何か書いてあるタグが付いているわよ。読んでみたら?」

「ああ、何々・・・祐一様、美加様、お世話になったものからのプレゼントです。記憶にないと思いますが、間違いなくそのお礼として差し上げたものです。お二人が困ったときに中を開けてみてください。きっとお役に立つと思います。それでは末永くお幸せに暮らしてください・・・かぐや」

「お父さん!かぐや姫からの贈り物だよ」

「かぐや姫?じゃあ、月から来たというのか?」

「月に人は住んでないよ、お父さん」

「そんなこと翔に言われなくても解っているよ。困ったときに開けろって書いてあるから今は開けないでおこう」