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われら男だ、飛び出せ! おっさん (第一部)

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8.それだ!



「揃ったな、まずはビールで乾杯だ」
「ああ、このために午後は水分を控えてたくらいだからな」
「ははは、実は俺もだ、じゃ」
「「「乾杯!」」」

「ふ~、染み渡るね……ところで、こないだ話した、三人で何かやろうって話なんだがな」
 いつも口火を切るのは優作だ。
「ああ、何かいいアイデアが浮かんだか?」
「アイデアの方はまだなんだが、家族の了解は得て来たよ」
「まだ何も決まってないのに気が早いな」
「いやぁ、この歳になっても、何か新しいことを始めようと思うとワクワクしてな、お前らは? なにか浮かんだか?」
「いや……ただ、俺も家族の了解は取れてる、この三人で、と言うことなら文句ないそうだ」
「なんだ、佳範も同じか」
「秀俊は?」
「俺んとこは娘一人だからな、あっさりOKしてくれたよ、部下にも下話はしてある」
「同じじゃねぇか、アイデアは?」
「そっちはまだ……」
「なんだ、三人とも一緒か、まあ、何をやるかは全然だけど、動き始めたことは確かみたいだな、もう一回乾杯しようじゃないか」
「ああ」
「いいね」
 二杯目のビールを飲み干すと、ぐっと話も落ち着いてくる。
「何をやろうかと言う以前に、俺は何が出来るのか考えてみたんだが、考えてみると、俺は剣道以外何もやっていないんだよな……まあ、体力だけは若い者にも負けないつもりだけどな、俺の取り得って言ったらそれくらいなんだよなぁ」
「体力、いいじゃないか、何はともあれ男は体力だよ、確かに俺と秀俊は体力面では若い頃と同じって訳には行かないなぁ」
「そうだな、俺も女物の下着売ってただけだからなぁ、取り得って何もない気がするよ、佳範は食い物関係に強いよな」
「ああ、まあ、一通りの知識はあるつもりだし、作る方もまるで素人と言うこともないつもりだけど……確かにさ、食い物屋は頭に浮かんだんだよ、だけど店を出そうとなると、不動産やら設備やら内装やらで結構金かかるぜ」
「ウチは下着屋だったから厨房設備のことはわからないけど、店舗の立ち上げから関わったから不動産屋や内装工事店ならいくつか知ってるけどな」
「気取らない食い物屋を繁華街に出すとしたら、どれくらいかな」
「そうだな……十坪くらいの店として、厨房を別にして三百万もあればとりあえず始められるかな……」
「一人百万くらいか、それくらいなら問題はないな」
「だけど、月々の家賃は二十万くらいかかりそうだぜ……佳範、食い物屋の利益率ってどれくらいなんだろう?」
「そうだな、かれこれ三割くらいになるのかな」
「とすると、俺たちは当面無給としても、月に四~五十万は売り上げないと赤字か?」
「そうなるな」
「素人が出す店でそんなに売り上げられるかな?」
「それはわからないけど、軌道に乗るまでは大変なことは確かだな、半年やそこらでつぶれる店も結構あるからな……」
「俺らはともかく、家族には迷惑かけたくはないな……」
 佳範と秀俊のやり取りをじっと聞いていた優作だが、二人の不安を払拭するアイデアを出した。

「屋台ってのはどうだろう?」

 佳範と秀俊は、はっとして顔を見合わせた。

「それだ!!」
「ああ、それなら家賃はかからないからな、失敗したところで家族にまで迷惑は及ばないな」
「言いだしっぺがこう言うのもなんだけどさ、お前ら、編集長に店長だろう? 屋台を引っ張ってもいいのか?」
「なんだよ、優作だって県警剣道の師範代だろう?」
「そうだよ、それにさ、なんだか定まった店を出すより、『裸一貫、再出発』って感じでゾクゾクするよ」
「ああ、俺、明日からジョギング始めるよ、まずは体力づくりだ、優作に遅れを取りたくないからな」
「だけどさ、俺、何の屋台か考えてないんだ」
「まあ、屋台の定番って言えば、おでん、焼き鳥、たこやき、焼きそば、あと、最近はクレープだのジェラートだのもあるけど……ラーメンはどうだ?」

「「それだ!!」」
 今度は優作と秀俊が声を揃えた。
「どうせやるなら横浜で一番のラーメン屋台になりたいよな、男なら」
「出たな? 優作の『男なら』が、だけど、正直言って、俺はインスタントラーメンくらいしか作ったことがないんだ……佳範、美味いラーメンを作れるようになるにはどうしたらいいんだ?」
「まあ、弟子入りだな、これは!ってラーメンを作る人の弟子にしてもらって修行するのが一番だろうな、まあ、創作ラーメンみたいな感じで勝負する手もなくはないが……」
「男なら本格派で勝負だろう?」
「ああ、俺も優作に賛成だ、佳範、誰か良い師匠を知らないか?」
「知ってるが……厳しいぞ」
「ああ、望むところだ」
「で? 誰なんだ?」
「『中華そばや』の佐藤さんって人だ、あっさりしょうゆ系であの人の右に出る人はいないと思うね……」