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物は話す

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バイトで軽作業をしたときのこと。
普通に起きたから、遅刻しないだろうと思って余裕ぶっこいてたら遅刻した。
俺は前から遅刻ばかりする迷惑野郎で、そんな自分が前から嫌で、だが治らない。そういうときは決まって不快だ。その感情を外部に放出したくないから、なるだけおとなしくいようとしてきた。だが、そういうことをすると、自分も、そして他人も不快なのである。
実際に他人がどう思っているのかは知らない。ただ、ふと従業員の顔が目に入ったとき、なんとなく不快感を抱かれているな、と感じるのである。

どうせ今日も同じだろうと思って、派遣会社やら現場の人やらと、気まずい会話をした。あくまで、俺の感情だ。

今日の仕事内容は、イベントの撤去作業。イベントを主催したのは某大手コンビニ。
俺は、家族を重視しているコンビニF、法律の息子とも解釈できるコンビニLをよく利用するのだが、今日のイベントを開催したのは、コンビニ七だったので萎えた。

その萎えた心は、生気を取り戻した。

俺はエンジニアリングよりサイエンスが好きで、前者をあまり見てこなかった。大勢の人間が周囲に居るのが嫌で、だからいつも、物、すなわち無生物に目がいく。それらは静止していて、何も怖くないからだ。
まあ何かの拍子に動くかもしれないが、そんなことはどうでもよく、「感情」として、人が大勢いるとき常にその状態にあった。

だが今日は違った。
金属製の板やポールなどを運んでいたとき。重心の位置やら回転させることやら、昔高校で習ったことを考えながら、それら無生物に接した。
それを続けていたら、だんだん楽しくなってきた。何か、それらが、
「俺はこうしてほしい!」
と叫んでいる気がして、
「かしこまりましたポール様」
みたいに服従している自分がいた。今考えたらただのMだが、過去のことだし全然いい。
何より、そんなものと会話できたような気がして、嬉しい気持ちが確かにあった。
金属の板は「ビーム」という名前だった。それは派遣会社の得意先の人間がそう言っていたのだが、俺は
(良い名前やんかオイw)
とか思ってしまった。しかしビームはツンデレだったのか知らないが、話してくれなかった…。
いや、話してくれた。なんか
「まとめて持ってけ」
とか言ってた。今思えば、集団を好む点、俺とは別の種族だなと感じる。ポールは群れたくないらしかった(大きさや重さが関係してるんだろう。単に。)。

そして仕事は終わった。

楽しかった。
次もおそらく遅刻するだろう。多分。
それで許してくれた「もの」は有難い存在だ。しかし、そういった「もの」には、不快感を抱かれたくない。

なんて、夜風に吹かれながら歩いている今、思った………
作品名:物は話す 作家名:島尾