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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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池の中の狂気

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第4章:狂気の犯行



 電話口に戻ってきた彼女は、テーブルに置きっ放しだった受話器を持ち上げ。
「もしもし? もしもし?」
小声で言った。
「どうした。やったのか?」
「いいえ。まだよ。奥さんの部屋がどれかわからないのよ。」
「そうだな。今日来たばかりだったな。あいつの部屋は階段のすぐ右のドアだ。」
「分かったわ。今はもう眠っているみたいに静かよ。」
「ふん。そうかい。一戦終えてお休み中か。そこにお見舞いしてやってくれ。」
「ええ。」
 彼女はまた受話器をテーブルに置いて、階段に向かった。階段の下でもう一度深呼吸をしたが、今度は、拳銃の安全レバーが解除されたままになっていることに気付いて、苦笑いした。
「こんな状況で笑えるなんて、私もやるわね。」
そしてまた。足音を立てずに階段を上り始めた。階段の上の右の部屋に意識を集中していると、突然、また婦人のあえぎ声が聞こえ始めた。
「2回戦開始ってわけ?」
2階に辿り着くと、少し違和感を感じた。と言うのも婦人の声は右側のドアではなく、左側から聞こえて来たからだった。
「部屋を移った気配は感じなかった。はじめからこっちの部屋にいたはず。あの旦那、かなりいい加減な奴ね。」
左の部屋のドアに耳を当ててみた。間違いなく、この部屋の中に二人がいる。
 彼女はもう一度、拳銃の安全レバーを確認した。それは間違いなく解除されている。それを右手にしっかり持って、左手でドアノブを掴んだ。指紋を残したくなかったが、音を立てず確実に侵入するために、ドアノブをしっかり掴む必要があったからだ。指紋は後で拭き取ればいいと判断した。雑念はなかった。彼女はもう行くしかない。

 ノブをゆっくりと回してドアを押すと、鍵は掛かっていなかった。ドアの隙間から中を覗くと、暗い室内を満月の明かりが、レースのカーテン越しに、ぼんやりと絨毯を照らしている。そこに静寂はなく、ベッドの軋む音が聞こえる。さらにドアを開けて二人の位置を確認した。部屋の奥の方に、白いシーツの上で上下する男の背中が見えた。彼女はゆっくり姿勢を屈め、部屋に入り、ドアを静かに閉めた。
 もう後戻りはできない。ここで見つかっても、発砲するしかない。旦那の指示を思い出した。『男は頭を撃て。妻は胸を撃ってくれ、葬式の時、顔を晒せるようにな。』
 道路に大型トラックの音が聞こえた。それに合わせるかのように、男の唸り声と夫人の絶叫までもピークに達した。今がチャンス。外の音で、銃声もかき消されるだろう。彼女は立ち上がり、両手で拳銃を構えながら、腰を振り続ける男の背後に近付いた。

作品名:池の中の狂気 作家名:亨利(ヘンリー)