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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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約束

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 大島が、ついに、傷害事件を起こした。被害者は岩田であった。岩田の店での出来事であった。下腹部へ刃物で刺した事件で有った。
新聞にも地方版に小さく載っただけで有り、近所の者もすぐには分からなかった。
 大竹が弁護士であることを知っていたらしく、管理人が弁護の依頼に来た。大島と管理人の梶原は実の兄弟であることが分かった。管理人は婿に入り梶原となった。大竹は岩田から反感を持たれそうな予感がしたが、まだここに住んでいたいと思う気持ちもあって、弁護を引き受けた。
 事件の概要は、大島が岩田の胸を触ったことらしい。
 ボックス席で大島は客が岩田の胸を触っているのを何度か見ていた。金のない大島はいつもカウンター席で有ったが、パチンコで儲かり、その日は、ボックス席に座った。ビールを2本飲んだところで
「何か飲んでいい」
と岩田が言った。
「好きなやつ飲みな」
岩田は3万円のボトルを入れた。
「ボトル入れたわよ」
「言っただろう。好きなもの飲めって」
「嬉しい、カンパーイ」
酔った勢いも有ったのだろう。大島は胸の中に手を差し込んだ。もちろんほとんどの客に許している岩田であったが、反射的に拒否してしまった。グラスを持った手で、大島を突き放した。その時グラスのウイスキーが、大島の顔に掛った。
なぜ自分だけが拒否されたのだと、激怒した大島はいつも座るカウンターに果物ナイフが有ることを知っていたので、それを取り、岩田を刺した。
 拘置所で面会すると、大島は殺意はなかったと言った。
「俺は岩田が好きだった。だから殺す気は無かった。刺したのは1回だ。それにカウンターの内側には果物ナイフと一緒に調理包丁もあった。でも、俺は果物ナイフを選んだ」
 大島は気の小さな人間だった。高校生の時にいじめられていた。それで、やくざの振りをしていたのだった。
大竹は執行猶予付きの判決に持ち込める確信を得た。
「あんな奴の弁護引き受けたのよ。サイテー」
「仕事ですから」
岩田の声が脳裏から聞こえた。
作品名:約束 作家名:吉葉ひろし