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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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Deep Fantasia

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「Deep Fantasia」


これは私が聞いた話です。

 ある日、遊 良太郎という名の軟派な男の人が、海岸を1人で散歩していました。すると、彼は足元に美しい赤いサンゴと真珠の髪飾りを見つけました。彼はそれがあまりに美しいので、思わず手に取ってポケットにしまってしまいました。

 そして何事もなかったかのように歩いていると、1人の少女が声を上げて泣いています。見かねた良太郎は、声をかけました。
「いったい何があったんだい」
 彼女は彼のほうを向きました。その人は美しい顔をしているばかりか、よく見ると下半身が魚の姿をしています。− そう、彼女はあの生物なのです。−彼女と目が合った良太郎は、軽くニッと笑いました。
「実はですね、私、16歳の誕生日に頂いた髪飾りを落としてしまって、いくら探しても見つからないのです…」
 そう言うと、人魚はまた声を上げて泣きました。

 良太郎は言いました。
「まあ、落ち着いてよ。僕を見てごらん。こんなきれいなもの拾ったんだよ。僕ってついてるなぁ」
 彼の手には、赤いサンゴと真珠の髪飾りがありました。人魚はすぐに泣き止みました。
「あ、それ、それです!見つけてくださったのですね!」
 彼女は彼の手から髪飾りを受け取ると、それに頬ずりをしました。彼女のうれしそうな様子を見て、彼は
「ふっ、礼には及ばないよ」
 と、きざなせりふを吐きました。

「あの、お礼と言っては何ですが、私のお城にご案内します」
 突然のお誘いに、軟派な良太郎も驚きました。
「君の家って、まさか…」
 人魚はにっこり笑ってうなずきました。良太郎は、海底の国に大変興味が湧いてきました。

 すると、人魚は良太郎に右手を差し出すように言いました。彼が彼女の言うとおりにすると、人魚は彼の手首にサンゴのシュシュをはめたのでした。
「私たち人魚のアクセサリーを身につけた陸の生物は、海の底に入っても呼吸ができるのです」
 彼女の言葉を聞いた良太郎は、
「へえ」
 と言って二度うなずくと、彼女に付いて海へ潜っていきました。
作品名:Deep Fantasia 作家名:藍城 舞美