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同級生

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◆ 結婚編 ◆


 あいつに、昔の彼女のことを正直に話した俺は、間違っていたのだろうか? でも、ただの付き合いではなく、五年も一緒に暮らしたことを黙っていたのでは、何か大きな隠し事でもしているようで後ろめたかった。
 ただ、意外なことには、その事実を不快に思うというより、なぜ結婚しなかったのか、ということにあいつは執着した。それもまるで、あいつが彼女の親友でもあるかのように俺を攻め立てた。
 
 俺は友人の結婚式であいつと再会し、あいつがまだ独身だとわかった瞬間に、結婚したいと強く思った。同棲していた彼女のこともとても好きだったのに、彼女に対しては一度もそんな感情は湧かなかった。この違いはいったい何なのだろう? とにかく俺は、あいつとはこれからずっといっしょにいたいし、絶対に他の男に取られたくないと思った。
 そこで、ハッと気がついた。彼女との経緯を正直に打ち明けてしまった俺は、何年共に暮らしても、いずれ別れてしまう奴だと思われてしまったのではないだろうか? 愚かにも俺は、自ら結婚相手の資格を放棄してしまったのではないだろうか?
 そんな自信のなさから、なかなかプロポーズができないまま一年が過ぎてしまった。そして、クリスマスという世の中のイベントの力を借りて、今夜こそは、という意気込みでその日を迎えた。
  
 ところが、せっかくムードあふれる店を探し準備万端整えたというのに、ワインで乾杯した時も、食事を終えた時も、ここぞという機会を生かすことができなかった。クリスマスプレゼントを贈る、なんてこととはわけが違う。
 しかし、彼女とのことをあれだけ攻め立てたあいつが、すんなりOKしてくれるとは到底思えない。考え込まれる光景が目に浮かび、断りの言葉が聞こえてくるようで、言い出せないまま時間だけが過ぎていった。
 
 とうとうイブのイベントも、イルミネーションの歩道を歩くのを残すだけになってしまった。このまま駅に着いたら、クリスマスの魔法が解けてしまう。そんなことを考えながら歩いていたら、昔もこんな状況があったことを思い出した。
 そうだ! 中学時代のあの土手だ。バレンタインに告白した時、あいつは素直に受け入れてくれた。今日のイブもきっと大丈夫、そんな気がしてきた。そうだ、あの時を思い出すんだ!
 そして、ついに俺は……
 
 返事がなかったのも、まるであの時と同じだった。でも、手を握り返してきたのであいつの顔を見ると、頬に一筋の涙が伝っていた。それを見た俺は、言葉以上の返事をもらったことがわかった。
 
 
 翌春、俺たちは結婚した。小さなゲストハウスで、身内とごく親しい友人たちだけを招き、ささやかな式を挙げた。
 これでは今までのご祝儀の元が取れない、なんてあいつは冗談を言っていたが、この歳だから式は挙げなくていいというあいつを説き伏せて挙げた式だった。
 俺は、どうしてもあいつのウエディング姿が見たかった。そして、予想通り、いや予想以上にあいつの花嫁姿は美しかった。俺はしっかりとその姿を心に焼き付けた。そして、俺たちふたりは、みんなの前で誓いのキスを交わした。

作品名:同級生 作家名:鏡湖