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同級生

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◇◆ 再会編 ◆◇


(あ~あ、また結婚式か……)
 晴れやかな服装とは対照的な気分で、私は式場へと向かった。
 
 これまでいったい何度、こうやって受付に名前を連ねただろう。
 初めての時はワクワクした。招待してもらったことに感激し、最後の両親への手紙にはまるで自分のことのように感動し、涙が溢れた。
 しかし、それも二度、三度となってくると、もう見慣れた光景で、かすかな微笑みを浮かべて見つめるだけになっていた。もちろん、本人たちにとっては一生に一度(たぶん)のことだから、準備も念入りにしただろうし、夢のような時間でもあろう。
 でも、こう招待客の常連ともなると、幸せを見せつけられているような被害者意識が湧いてくる。
 あなたはまだ? 結婚するつもりはないの? 相手がいないのかしら……
 
 私だって、この歳までいろいろと恋愛は経験してきた。結婚を考えたこともあった。でも結局、そこまで行きつくことがなかったのは、縁がなかったということだろう。
 もう三十の大台を超え、そろそろ寿招待状ともお別れかと思っていたところに、高校の友人から招待状が届いた。
(これが最後かもしれない、がんばって行ってこよう)
 
 
   ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 
 式場のロビーで、披露宴が始まるのを待っている俺の視線の先に、ひとりの招待客が目に止まった。
(あれっ、あいつか?)
 友人たちに囲まれにこやかに話している姿に、どこか昔の面影があった。高校を出てから一度も会っていない。いや、高校時代もクラスが違ったので、ほとんど見かけることもなかった。俺にとってのあいつの印象は中学時代のものだ。だから、すっかり大人の女性になった姿に戸惑うのも無理はない。
 今日の新郎新婦は、ともにあの高校の同級生だから、列席者の中に見たことのある顔がいくつかあった。
(そうか、あいつも新婦の友だちだったんだ。それにしても、綺麗になったなあ……)
 
 
   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 
 
 披露宴が始まるので席に着いた私の視線の先に、ひとりの男が目に止まった。
(あれっ、アイツかしら?)
 新郎側の友人のテーブルで談笑している横顔が、招待客の合い間からチラッと見えた。学ランを着せたらあの頃に戻るのではと思うほど、面影が強く残っている。たしか高校も同じだったはずだが、中学の頃の印象しか思い出せない。あの頃が、とても懐かしくよみがえってきた。
 新婦たちには悪いが、いつもの見慣れた披露宴の会場から、私の頭の中は、自分の中学時代にすっかりタイムスリップしていた。
(アイツは、もう結婚しているのかしら? あとでこっそり、薬指を見てみよう)
 
 
   ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 
 同じテーブルの奴らと話しながらも、俺の頭はあいつのことでいっぱいだった。中学生になって、急に女らしくなったあいつに夢中だったのに、なぜ、高校生になったら、興味が失せてしまったのだろう? 終わった初恋という枠に、なぜかすんなりと収まってしまった。
 しかし、こうして突然、大人の女性の姿になって目の前に現れたあいつに、俺の胸はまたときめき始めた。まるで、止まっていた時計が時を経て、また動き出したかのように。
 久しぶりに見る姿が、パーティドレスというのもあまりに演出が効き過ぎている。普段はきっとTシャツにパーカーでも羽織っているのだろうが、そんな姿も見てみたい、そして、中学時代、あの日あの時からの時間を埋め直したい、そう強く思った。
(あいつはまだ独身だろうか? あとでこっそり、薬指を見てみよう)
 
 
   * * * * * * * *
 
 
 恒例の涙の両親への感謝の言葉も終わり、新郎新婦に見送られて列席者はみな会場を後にした。
 ロビーのあちこちで、友人たちの輪ができ、二次会への打ち合わせが行われている。
 そんな中、ひと組の男女がぎこちない様子で互いに近づいてきた。そして、それぞれ相手の左手の薬指を見つめ合った。

作品名:同級生 作家名:鏡湖