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螺旋の階段

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小説

私は階段をゆっくり降りていた。長い螺旋階段だ。
 どこまでも、どこまでも下へと続いて行く。私はなぜここにいるのかわからない。気がついた時、私はすでにこの階段を降りている途中であった。
 周りの壁にはたくさんの写真んが貼ってある。その一つ一つを目を凝らして見る気も起きず、何となくしか見ない。だが、歩くのにもいい時間が経、暇になってくるとその一枚を見た。誰かが笑っている写真、何処かの家族写ってる写真。一人泣いている写真。どれも同じ人物が必ず写っている。
 それは男の子だ。帽子をいつもかぶっている男の子。私は歩きながら、写真を眺める。そして気になった写真を手にとる。やはりあの男の子が写っている。どこかで見たことがあるだが私は思い出せなかった。忘れてはいけない誰かな気がする。それを忘れている。なぜだろうか。
 静かな空間だ。薄暗いく、居心地のいい場所だ。明かりは小さなロウソクばかりだ。夜の星々のよう下も上も輝いている。
  歩いているうちに私は疲れていないことに気がつき足を止めた。まるで、私の身体はとうに滅び、魂だけが浮遊しているようなそんな感じがした。
 螺旋階段は円形の穴に沿って作られており、中央は何も無い。
 私は中央の何も無いところから下を覗いた。真っ暗闇に無数の光が見えた。おそらくロウソクの明かりだと私は思う。
 もしかしたら私は死んでしまったためにココにいるのではないか。再びそう考え、ならばと。私はこの中央から下と向かおうと思い、足を一歩踏み込んだ。そして私は跳ぶのだ。
 その瞬間時間が止まったように感じ、突然時間は早送りになっていく。私はどんどん下へ向かって落ちて行く。
 時間や空間を何度も超えてゆくような、今までかつて感じたことの無い感覚だ。
 気が狂いそうになるのを必死におさえ、ついに地面が見えた。
 この身体のような浮遊体は地面に叩きつけられ、五メートルほどバウンドした。そのおかしな感覚もう忘れられないだろうと私は思った。
 私は地面に仰向けに倒れていた。さっきまで落下していた宙を見て私はその光景に息をのむ。とても美しい天の川だ。
 ここが何処かはわからない。だが、この光景はたしかどこかで見た覚えが。
「__さん。聞こえますか。__さん。聞こえたら教えてください」
 私は目を覚ました。マスクを下男の顔、明かりがまぶしく照らす。
 そうだ。私は手術を受けていたのだ。長い眠りから覚めすべてを思い出した。
 私は手術を終え、手術室から運ばれる。その途中で帽子をかぶった小さな男の子が心配そうに見ている。
「パパ」
そうだ。この子は私の息子だ。
作品名:螺旋の階段 作家名:鳳 珠希