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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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孤独たちの水底 探偵奇談12

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手離して、還る



颯馬の先導の元、に本殿の裏に回り、山の中に入った郁は、洞窟の中から出てきた伊吹と瑞の姿を見つけたとき膝から力が抜けた。無事だ、ちゃんと戻ってきた…!

「なんでそんなとこから出てくるわけ?学校にいたんでしょ、二人とも。もうわけわかんなさすぎるよ!」

颯馬が言った。聞けば神事以外では立ち入り禁止の場所らしい。神様が住まうとされる特別な場所だというのだが、学校で消えた二人がそこから帰ってくるというのは理解に苦しむ。

「そんなん知るかよ。おまえんちの天狗に聞いてくれ…」

疲れた声で、颯馬に応える瑞。とくに大きなケガはないようだ。ただひどく疲れているようで、二人ともぐったりと身体を傾けている。

「…なにがあったの?」
「すまん一之瀬、今はとにかく寝させてくれ…」
「限界…」

二人は社務所に着くなり、畳にころんと転がって眠ってしまったのだった。何とも気の抜けた、子どもみたいな顔で。すっかり安心しきっているような。

「まあとりあえずは、よかったよ。無事で」
「うん…」

颯馬がストーブに火を入れ、ふたりに毛布をかけた。祭りは終盤を迎え、参拝客らは次々に参道を下っていく。もう九時半が近い。灯りが落とされ、明日からはまた普通の日常が戻ってくる。

「郁ちゃん、送るよ。もう遅い。先輩たちは、少し休ませてから帰すから」
「平気、まだ美波たちいるみたいだし。合流するよ」
「そう?気を付けてね」
「うん」

さきほどのおかしな空気の告白めいた出来事が頭をよぎり、颯馬の顔をまともに見られない。あんなのはきっと彼の気まぐれで、気にするだけ無駄なのに。それなのに意識している自分を見透かされそうで…。

「じゃあまたね」

鞄を手にして立ち上がる。伊吹と瑞の寝顔を見て、聞きたいことが山ほどあって去りがたく感じたが、仕方ないか。



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