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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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孤独たちの水底 探偵奇談12

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魂の片割れ



白狐とともに本殿を出て鳥居をくぐり、石段を抜けた先で瑞が見たものは、ひたすらに続く夏の白い光景だった。

農道がまっすぐに続き、辺りはすべて青々とした稲穂の揺れる田んぼである。四方には緑の山々がそびえ、盆地のような地形の中を、ただまっすぐに続く道を、瑞は歩いている。

「夏だ…
「ここは沓薙四柱の懐ではないようだな」
「どういうこと?」
「…神々の意思の世界ではない。これは、おまえが作り出している世界ではないのか?」
「……わかんないよ、俺には」

太陽が眩しい。真夏なのだ。本殿を囲う雑木林を出てからは、もう蝉の声は聴こえない。それでも日差しの白っぽさが明らかに夏だし、田んぼの稲穂も同様だ。ただ妙に涼しく心地よい。

「雨上がりの匂いがする。雨を連れ、雲が去っていく」

隣を歩く白狐が静かに言う。なるほど、砂利道のところどころに水たまりができている。

「…妙な水たまりだ」

瑞はその一つに屈みこみ、覗き込む。妙に澄んでいるのだ。泥が混じっている道なのに、青い空をそのまま映して動かない。鏡のように見える。

「なんか、ほんとに青い鏡みたいに見えてくるね」
「それだけ空が青く美しく、風がないのだろうな」

白狐に言われ、まあ確かに空は青いからな、と天を仰いだそのとき。

「ハイッ!!」

瑞は反射的に返事をした。隣の狐が驚いたように肩を震わせる。

「な、なんだ突然!」
「いま呼ばれた!」