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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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孤独たちの水底 探偵奇談12

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祭りの夜



天狗神社の境内に、慌ただしく人が出入りしている。天谷颯馬(あまたにそうま)は、落ち葉を集めながら、神殿に供物が運ばれていくのを見ている。沓薙山(くつなぎやま)の秋祭りが、明後日から始まるのだ。

「いよいよですなあ」
「天気もいいみたいだし、紅葉真っ盛り。今年も盛り上がるでしょう」

氏子の総代さんらが、準備をしながら談笑しているのが聞こえる。手伝いとして来てくれる巫女さんたちも、御奉仕の仕方を教わりながら、時折楽しそうに笑い声をあげていた。

沓薙山の祭りは、一週間にわたり開催される。宵山、本祭は近隣の住民を呼んで盛大に行われる。この町の、ちょっとしたイベントなのだ。山を下り町内を練り歩く神輿、神楽や巫女舞、夜店の並ぶ境内を目当てに、多くの参拝客が押し寄せる。

「颯馬、氏子さんや保育園に配る面の準備は?」
「できてるよー。もう町内会長さんに渡してある」

神主である祖父に言われ、颯馬は答える。この山の祭りには、面が欠かせないのだ。

祭りの間は、沓薙山の神様達――四柱様が参拝客に紛れて現世に姿を現す、と言われている。

すれ違うひとがもしかしたら、神様かもしれない。そんな期待を込めて、祭りの間は、参拝客はみな面をかぶって山を登るのがしきたりだった。アニメキャラクターの面、手作りの面、古めかしい張り子の面。それぞれが顔を隠して楽しむこの祭りは、奇祭として知られている。

「さて、今年は何が起きるか」

祖父はぼそりとそう呟くと、準備に戻っていった。
毎年祭りの時期には不可思議なことが起きる。封をしてあった御神酒のたるから酒がなくなっていたり、参道の提灯が明滅したり、神楽の人数が増えていたり。神様達が現世にやってきたことをアピールしているのだと、参拝者をたいそう喜ばせている。


今年は、神様達が関心を寄せる人間がごく身近に存在している。
何も起きないはずがない。颯馬は半ばそう確信しているのだった。





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