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わたなべめぐみ
わたなべめぐみ
novelistID. 54639
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謝恩会(中編)~手からこぼれ落ちる~

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「会ったことあるっていうか、今目の前のおるっていうか……」

 二言目を言い終わらないうちに、湊人は大慌てでサラの口をふさいだ。「二人ってあんがい仲いいんやな」と悠里がのんきなことを言う。会話の矛先を変えるために、湊人は最後の手段に出る。

「サラの好きな人もすぐそこにいるもんなあ。ほらもうすぐそこ……」

 サラから離れるやいなやドラムを叩く真似をする。湊人の言いたいことに気づいたのか、悠里もそれに乗って「そうそうテレビ中継でギター壊した人……」とライブをしながらギターを叩き壊す真似をする。

 するとそれまでスタジオのすみで傍観していた要が「えーサラちゃんの好きな人ってどんなやつ?」と食いついてきた。サラは顔を真っ赤にして湊人と要のあいだに立ちふさがる。

「この口の軽い人に言うたらあかん! 私のことはもうええから、練習……」

 サラが叫んだその時、防音扉が開いて陽人が姿を見せた。「やっと全員揃った?」と悠里と同じ調子でのんきに言いながら、ドラムセットに歩みよる。

「さーあ、サラちゃんのドラム、聞かせてもらおかな」

 陽人がそう言って彼女にスティックを手渡すと、耳まで真っ赤に染めたサラがしどろもどろしながら逃げ去ってしまった。

 あっけにとられる陽人を残して、湊人たちは笑いあった。サラの真っ赤になった顔を思い出しながら「好きの境目をこえたけれど未だむくわれない仲間」だなと思った。

「あんたらが行ったらややこしいから、私が連れてくるわ」

 晴乃は瞳にたまっていた涙をぬぐい取ると、にっこりと笑ってそう言った。

「さあさあ、もうあんまり時間ないよー」

 要が左利き用のギターを悠里に手渡す。先日兄の陽人に誕生日プレゼントとして新しいギターを買ってもらったそうだが、本番は使い慣れた今までのギターで出ると言っていた。

 ピアノの椅子に座る。悠里がこちらを見ている。その透き通るようなまなざしをまっすぐに受け取って、湊人はピアノの鍵盤に指をそろえた。