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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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躑躅

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3



 他市との交流人事で鈴木はk市に異動となった。福祉課に配属され、1人親家庭に遊園地への旅行の招待状を送りながら、宛先が五月夕の名をパソコン画面に見つけた。子供が居たのかとプロポーズの後に消えてしまった理由を見つけた思いだった。
 鈴木は指輪だけは夕に返したかった。もし独身であれば、再びプロポーズしたい気持ちもあった。質屋の前で夕に会ってから1年が経っていた。
 夕が住んでいる家は市営団地であった。6棟の棟があり、3-51の番号から、3号棟の5階に向かった。5階であるから、エレベーターは無い。コンクリートの階段と鈴木の革靴の音が階段を上がるたびに、大きな音になっていくと鈴木は感じた。それは鈴木自身の胸の高まりなのかもしれない。重そうな鉄のドアである。チャイムを押した。チェーンロックされた扉から鈴木の腰のあたりに、幼児の顔が半分覗いた。
「ママは留守です」
と言って扉を閉めた。鈴木は表札を観たが何も書かれていない白い板があるだけであった。土曜日の昼時。この時間なら夕は居ると思って来たのだった。すでに転居して、別の人が住んでいるのだろうか。とりあえず、誰かに聞いてみようと思った。昼時で誰にも会えない。仕方なく、1階のチャイムを押した。
「セールスならお断りよ」
食事中だったのだろうか、不機嫌そうな声が、聞こえたが扉は開かない。
「役所のものです」
鈴木は奥の手を使った。どうしても夕のことが知りたかった。
「今日は休みでしょうが」
扉が開き60歳を過ぎたくらいの人が出た。
「すみません。1人親家庭を訪問しています。5階にお住まいの方は、五月夕様ですよね」
「あなたそれよりも名刺は無いの?」
「大変失礼をしました」
鈴木は名刺入れから名刺を出して、住人に手渡した。
「役所の方と分かればいいから、名刺は返すわよ。五月さんですよ」
「ありがとうございます。お子様だけの様だったので、出直してきます」
「夜はいますよ。今日は保育園がお休みだから、筆ちゃん留守番してるのかな」
「お手間掛けました。失礼いたします」
鈴木は五月夕が確認できたことに安堵した。

作品名:躑躅 作家名:吉葉ひろし