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電撃FCI The episode of SEGA 3

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Final Stage2 対決絶無、希望と夢のクライマックス


 ビーッ、というけたたましいまでの音が辺りに響いた。その瞬間、ブラスト、ゲージ、体力のバロメーター全てが消失し、イグニッションデュエルが強制終了させられた。
「びっくりした……一体何?」
 美琴は、あまりに突然すぎる音に、驚きを隠せなかった。
「これはまさか……!? ミロク、ミイナ!」
 サヤはナビ二人の名を呼ぶ。
 そこにいる全員が、一体何が起こったのか理解できずにいた。
 ある男を除いて。
「ふふふ……どうやらお出ましのようだね」
 臨也は妖しく笑った。
「臨也? あんた、何を笑って……」
 臨也が事の仔細を語るよりも先に、ナビ二人が端末によって状況を把握した。
「この反応は……!?」
「ドラゴン生体反応、九十六パーセント。マナ量、九十八パーセント。能力系統百パーセント一致」
 突然現れたものの正体を判断するのに、迷うまでもなかった。
「この反応はまさしく、真竜反応。真竜フォーマルハウトだ!」
 ミロクの片手にある端末より発せられる警報音は、どんどん大きく、激しいものになっていく。真竜がすぐそこまで迫っているのを物語っていた。
 そして、真竜フォーマルハウトは姿を表した。
 クリスタルのイバラが、各地から飛び出ている丸の内駅舎の外壁を崩壊させ、イバラ共々崩落していく駅舎から、真っ黒な影が姿を表した。
 その姿は、およそドラゴンとは思えないような様相であり、漆黒に紫の色合いの鎧のようなものを身にまとっている。
 両手の部分は、マナが溜まっているようになっており、一つの形を止めない変幻自在の爪となっている。
 ドラゴンとは程遠い姿をしながらも、頭部はドラゴンらしい造形をしていた。ギザギザした牙が見え隠れし、鼻先には角が立っている。
 かつて東京へと飛来し、その当時人類にとって希望の場所であった議事堂に、軍団を引き連れて襲来し、一日にして議事堂を強力な毒のあるフロワロに沈めたことがある。
 一つの軍団を統率する者でありながら、自らも前線に立って人間を捕食する。
 恐怖、絶望、そして腐敗した人間こそがフォーマルハウトの最も好みとするが故の行動であり、恐怖を与える意味では彼自身が出ていくことが非常に効果的であった。
「フォーマルハウトめ、こんな所に隠れてやがったのか!」
「……? 待ってください、ミロク。あれは確かにフォーマルハウトの姿をしていますが、フォーマルハウトとは違う……」
 ミイナが唐突に言う。
「何を言ってる? 数値はやつのものそのものだ。違うわけが……」
 ミロクは、手にする端末に表示されるデータを再び照合してみた。
 端末上の数値はかつて、フォーマルハウトが東京に侵攻してきたときに測ったものと一致している。能力などにも差異はない。
「っ!? なんだこれは!?」
 ミロクが端末を見ていると、表示される数値があり得ない変化をし始めた。
 全数値がおかしな値になっている。最高値は百パーセントのはずが、それを超えて、ついには測定不能になってしまった。
「こんなことがあり得るのか!?」
「あれがフォーマルハウトであれば起こり得ない数値です。しかし、それ以外の存在であれば……」
「フフフ……! 人間ども、久しぶりだな!」
 ナビ二人が困惑している中、フォーマルハウトは声を発した。
「私はしばらくの間、人間どもを観察することにした。夢を持つことが本当に絶望へと変わることがないのか。それを調べるためにな」
 声音はフォーマルハウトのものではあるが、彼ならば考えようもないことを口にした。
「あいつ、本当にあのフォーマルハウトなの?」
 サヤも妙に思い始めた。
 かつてのフォーマルハウトは、夢などというものに一切興味を持っていなかった。
 彼の原動力、それは全て恐怖に陥った人間を食い殺すことに他なかった。
「フォーマルハウト、ね。こいつからはいけ好かない感じがするわ。それにそのしゃべり方、あの化け物と一緒じゃない?」
 勘の鋭い美琴は、フォーマルハウトの正体をおおよそ把握していた。
「あの化け物……?」
 サヤは美琴の言葉に不振を抱く。フォーマルハウトは真竜であり、地球上の生物全てを喰らい尽くす存在である。化け物と言う一言ですませられるようなものではない。
「前に私に負けておきながら、もう復活したっていうのかしら? しかもそんな大層な姿に変えてまでね!」
「あなたに負けて……!?」
 サヤはいよいよ混乱し始めた。
 いくら美琴が学園都市で七人の超能力者(レベル5)といっても、サヤのように、竜を狩るものとしての素質はないはずだった。そして、その素質がなければ真竜とまともに渡り合えるはずもない。
「ふん、相変わらず威勢だけはいいようだな。私はこの通り最強の存在として復活した。確実に貴様を葬り去るためにな!」
 フォーマルハウトは波動を放った。波動は強烈な風となって美琴達に吹き付ける。
 美琴は風で乱れた髪を直すと、不敵に笑った。
「確かに、力はずいぶんとつけたみたいね。でも、そんなものは偽物、人様の力を奪って威張り張っているのと何も変わらないわ!」
「ふん……これだから凡愚は……。あまりに力の差がある者と相手どると、どうしてもやせ我慢をしたくなるらしいな……」
 フォーマルハウトは冷静さを保ちながらも、少し焦りを見せ始めていた。
「はあっ!」
 サヤは一気にフォーマルハウトへ距離を詰めると、そのまま斬り抜けた。
「ぬおっ!?」
 フォーマルハウトはダメージを受けた。それも、本当にフォーマルハウトならば、掠り傷程度ですみそうな攻撃に、目に見えるダメージを負ったのである。
「……確かに、あんたはフォーマルハウトじゃないわね。その体、真竜、ましてドラゴンって考えても脆い。あんたの正体は何っ!?」
 サヤは切っ先をフォーマルハウトに向ける。
 サヤの問いに答える間もなく、フォーマルハウトは自らに起きたことに混乱していた。
「ぐおお……何故だ、何故こやつらは絶望せぬ!? 何故貴様らは、私がいかに夢を喰らおうとも前を見ていられると言うのだ!?」
「どうやら、君の負けのようだね。フォーマルハウト……いや、絶無さん」
 臨也がせせら笑いながら無様に崩れるフォーマルハウト、もとい絶無に視線を向ける。
「き、貴様っ! 折原臨也! どういうつもりだ。私を裏切るつもりか!?」
 臨也と絶無は通じていた。
「ハハハッ! 俺が君の味方をするだって? 面白い冗談を言うねぇ。俺の目的はシズちゃん、平和島静雄を倒すこと、そしてヒトを愛してヒトに愛されることさ。そのためなら、人間以外の存在はなんでも利用するつもりだったよ?」
 臨也と絶無が出合い、表面上は手を組んだ振りをしていたのは、しばらく前、電神ドリームキャストと絶無との戦いが始まった頃だった。
 臨也にとっての仇敵、平和島静雄はメインキャラクターとしてこの世界に召喚され、対する臨也はサポートキャラとして電神に喚ばれた。
 メインキャラとサポートキャラとでは戦いにならず、もとから殺し合いの戦いを繰り広げていた二人は、鉢合わせとなるたびに、静雄によって臨也は攻撃されていた。
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 3 作家名:綾田宗