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薔薇とLADYROSE

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 桜の花が咲くこの時期。LADYROSEは日本に居る事が多い。それは彼女にとって唯一の楽しみである薔薇の花を鑑賞出来るからだ。
 毎年、旧古河庭園を訪れる。それは彼女にとって数少ない楽しみでもあったのだ。
 旧古河庭園は、もと明治の元勲・陸奥宗光の邸宅だったが、次男が古河家の養子になったので1919年に古河虎之助男爵の邸宅となった。武蔵野台地の斜面と低地という地形を活かし、北側の小高い丘には洋館を建て、斜面には洋風庭園、そして低地には日本庭園を配したのが特徴で、現在は国有財産であり、東京都が借り受けて一般公開している。国の名勝に指定されている。東京のバラの名所として余りにも有名で、薔薇の花が咲く時期は広く全国や海外からも人が来る。
「今年も見事だわ」
 庭園の小高い場所に立って眺めていると、幼稚園児と思われる子が近づいて来て
「あのね。お姉さんにこれをわたすように言われたの」
 そう言って白い紙切れを差し出した。
「あら、ありがとう。誰から?」
「あのおじちゃん……あれ、いない」
 その子が指差した所には誰もいなかった。
「ありがとうね」
 LADYROSEはそう言って持っていたチョコをその子に渡した。
「ありがとうお姉さん!」
 その子は嬉しそうにチョコを握るとその場を去って行った。
 LADYROSEはその紙切れをポケットにしまうと、高い場所から下に降りて行った。庭園の下の方は日本庭園となっており、木々に囲まれた一角となっている。
 その庭園の一番奥の東屋に向かうとベンチに座った。こうすれば死角は無い。唯一の死角の後ろは壁となっているからだ。ポケットから先程の紙を出して眺める。そこには……
『白い薔薇には棘がある。その棘を利用しようとする者に気をつける』
 そう書かれてあった。他の者には何の意味か判らないが彼女には充分に理解出来る事だった。
「は、また余計なお世話を……」
 口角をを上げると、その紙切れを傍の水飲み場に持って行き、水に晒した。すると今までの文字は消えて新たな文字が浮かび上がった。
『「starsoldier」が狙っている身辺に気をつけろ』
「だから余計なお世話なのよ」
 LADYROSEはそう言って、その紙切れを千切って、ゴミ箱に入れた。その途端後ろに冷たく固い感触を感じた。
「一緒に来て貰おうか、首領がお待ちかねだ」
 背中の感触から、何が当てられているのは判った。恐らく「コルトガバメント」45口径だと感じた。弾は7発。だが今では多くの亜流モデルが存在する。中には八発売撃てるように改造されたものもあった。
「こんな子供の居る庭で撃つつもりじゃ無いでしょうね」
「それは、アンタ次第だよ。何ならここでナイフで殺っても良いんだぜ。その背中の白い薔薇ごと切ってもさ」
「判ったわ。大人しく従いましょう」
 彼女としてはここで撃ち合いはしたくなかった。子供が大勢遊びに来ているし、それより何よりここの貴重な薔薇が傷つくのが嫌だった。
「薔薇に何かあったら、来年から楽しみが無くなるじゃない」
 それも本心だった。
「starsoldier」は言わば同業者だったが、組織に迎合せずに一匹狼を自認するLADYROSEに対して「starsoldier」は多くの配下を持つ組織だった。
 昨年の西側の極秘文書の争奪戦で、彼女は「starsoldier」の連中を出し抜いたのだった。それ以来狙われていた。
 大人しく庭園の外まで付いて来て車に乗せられた所で、首筋に衝撃を感じて意識を亡くした。

 それからの記憶は無かった。目を醒まして見ると、何処かの地下室みたいな一室で、一糸纏わぬ姿にされていて、しかも両方の手首を上に伸ばされた状態で磔のように固定されていた。足だけが自由だったのと、体に痛みは無かった所から、乱暴は未だされていない様だった。だが、この格好からして、連中が何を目的なのかは良く判った。
「目が覚めたかね」
 その時、入り口のドアが開いて入って来たのは、昨年もやりあった、「starsoldier」のボスのブラックスパイダーだった。
「良いカッコだな。しかし見れば見るほど素晴らしい躰だ。色香に迷う連中が多いのも頷ける。だが、両手を固定されていては、どうしようもあるまい。素人相手ならいざ知らず。俺が相手では手も足も出まい。これから長年の恨みをたっぷりと返させて貰うかな」
 ブラックスパイダーはそう言うとズボンを脱いで下半身だけ脱ぎだした。そして胸を指して
「この胸ポケットにはその手錠の鍵が入っている。この状態で俺を倒す事が出来たらやってみな。好きにしてみろよ」
 ブラックスパイダーはそう言って何も身に着けていない LADYROSEの躰に迫って来た。
「しかし、見れば見るほど素晴らしい躰だ。白い肌、男なら誰でも触れてみたいと思う見事な乳房。正面だから見えないが背中の噂の薔薇の彫り物もさぞ見事なのだろう。この格好で楽しんだ後は四つん這いにして後ろからも楽しませて貰うとするか」
 ブラックスパイダーはそう言うと熱り立ったものを晒してLADYROSEに迫って来る。そしてその手がLADYROSEの白い豊かな乳房に触れた瞬間だった。
 LADYROSEの両足が反り返りブラックスパイダーの首に絡んだのだった。そして膝を曲げて首を締め付けると強く腰を捻った。
「ボキッ」
 嫌な音がしてブラックスパイダーの首が項垂れた。LADYROSEは片方の脚でブラックスパイダーの躰を支えつつ、反対の足で胸ポケットの鍵を取り出した。そして足をブラックスパイダーの躰から放つと、その躰が崩れ落ちた。
 LADYROSEは鍵を足の指で挟むと、思い切り反り返り、足を伸ばして何とか片手の手錠の鍵を外す事に成功した。そして自由になった手を使い反対の手の鍵も外した。
「全く人に見せられない格好だわね」
 そう呟いて、ブラックスパイダーが事切れている事を確認する。そして、自由になると部屋の中を見回した。自分の衣類が椅子に掛けられていたので、それを身に付ける。壁のロッカーには色々な武器がしまってあったが、その中でワルサーPPKを三丁取り出す。380ACP弾仕様があったので、それを装填した。
 両手にPPKを持ち、残りの一丁はズボンのポケットに差した。ワルサーPPKを選んだのは、オートマチックだと言う事。いざとなれば同時に両手で撃つ事が出来る点。小型ながら殺傷能力が高い事。そして他よりも軽い事。これはここから脱出するのにどれ程の事があるか判らない。それを考慮して体力を温存させる為でもある。準備は出来た。そっと入り口のドアを開けて外の様子を伺う。出て直ぐの廊下には誰も居なかった。数メートる事に白熱灯が点いていて、様子が判るようになっていた。
 そっとドアを開けて廊下に出て見る。幅1メートルほどの廊下だった。
『これなら一度に大勢はやって来られない。一人一人狙いを絞って殺れば良い』
 冷静にそう考えた。だが、すぐに数人の足音がする。廊下の角で待ち伏せ、一人一人狙って撃って行く。
「ドギューン。ドギューン」
作品名:薔薇とLADYROSE 作家名:まんぼう