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時計が二十三時を回っている。リビングのソファでくつろぎながら、精神科医の夫とその奥さんが話している。
「この間から診ている患者さんなんだが、経過がよくてボクもうれしいよ。非常に可愛らしい娘さんなんだが、自分のことをニワトリだと思い込んでいてね」
「それはそれは……そのコは、卵でも産んであたためているの？」
「それは無いんだが、どうも、一日のうちで早朝のテンションが一番高いらしいんだよ。夜に向かってぼんやりしてくが、早朝にはペチャクチャしゃべってチャキチャキパタパタドタバタ動き回って、同棲相手から愛想を尽かされかけてたそうだ」
「それはお相手も大変ねえ。でも、今は上手くやれているのね」
「ああ、無事に上手く行っているみたいだ」
「さすがあなた。そのコも治ってよかったわね」
「ニワトリの形をした目覚まし時計だと思い込ませたから、トサカをポンとやると鳴りやむんだよ」

【完】