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告白

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 高校二年生の由美の目の前には一つの綺麗にラッピングされたハート型の手作りチョコレートが置いてある。先程から、それを眺めて机に突っ伏しているのだ。
「はぁ~。バレンタインに渡せなかったこのチョコ、どうしようかな。捨てるなんて出来ないし、自分で食べるなんて持ってのほかだし」
 由美はクラスの雅人に密かに恋をしていた。昨年は勇気が持てず、バレンタインの時も雅人に告白出来なかった。だから今年こそはと思い、手作りでハート型のチョコを拵えたのだった。
 雅人は背は百七十八センチほどあり、成績も良くスポーツにも秀でている。当然クラスの女子にも評判が良い。密かに想っている子も居ると想像出来た。
 当日、告白しようとした時だった。放課後の教室で、クラスでも男子に人気の里沙が雅人にチョコレートを渡したのだ。由美は正直『まさか』と思った。それは里沙は背が高くスタイル抜群で、脚が長く髪も背中まで伸ばしていて、その美しさは評判だ。
 顔も芸能人にスカウトされても可笑しくない程で実際原宿を歩いていると数回声を掛けられた事があるそうだ。
 そんな里沙が本命チョコを雅人に渡したのだ。綺麗にラッピングされ、一発で本命だと判った。
「前から、雅人くんのことが好きだったの。よかったら受け取って下さい」
 そう言った里沙の表情は真剣で、それが本命だと誰にも判った。
 一方、告白された雅人は驚きの表情を浮かべ
「え、里沙ちゃんみたいな子が僕を……正直今は驚きで即答出来ないから、受け取らせて貰って後で返事をするね」
 そう言ってチョコを受け取った。
 そんな光景を目の前で見てしまった由美はとてもその次にチョコを渡して告白なんてする勇気を失ってしまったのだ。
「里沙なんかに私が勝てる訳ないよね。向こうは去年のホワイトデーに男子から山ほどプレゼント貰ったのだものね。何も無かった私なんか相手にされないよ。それに里沙と雅人くんならお似合いのカップルだからねえ」
 そんな思いを胸に抱いてチョコを眺めていたのだ。
「あなた、それでいいの?」
 振り向くと母親の妹の佐知子叔母だった。
「叔母さん。いつ来たの?」
「何言ってるの。ピンポン押しても返事が無いので、留守かと思ったら家の明かりは点いてるし、玄関の鍵は掛かっていないので、不用心だと思って、恐る恐る入って来てみたのよ。そうしたらあんたが何かぶつぶつ言っていたと言う訳」
 佐知子叔母は両手を腰に当てて仁王立ちしていた。
「え~じゃあ私の独り言全部聴いていたの?」
「まあそうね。大体は判ったわ」
「え~お母さんには内緒にしていてね」
「言う訳無いじゃない。呆れた」
「私にとっては重大な事なんだから」
「でも、あんたはその雅人くんだっけ、ちゃんと告白してないのでしょう」
「うん。そうだけど……でも無理だよ里沙は特別だもの」
「何言ってるの。里沙だか佐里だか知らないけど。それが何なの」
 佐知子叔母はやけに攻撃的である。
「叔母さんは里沙を見たことが無いからそんな事言うのよ。これを見て」
 そう言って由美はスマホを出して学校で撮影した写真を幾つか佐知子叔母に見せた。
「この子が里沙よ。どう他の子と全く違うでしょう」
 確かに何人かで一緒に写っている写真でも一人だけ飛び抜けて目立っていた。
「ふう~ん。確かに目立つ子ね。でもそれがどうしたの?」
「え? だって私とじゃ全くレベルが違うじゃない。私なんか髪はショートカットだし、背だって平均だし。脚だって特別長くないし。よく言われるのは『お前、後ろから見ると男子と間違えるぞ』なんて言われた事もあるのよ」
 由美としてみれば、客観的に見ても女子の魅力として自分は里沙に勝てないと言いたかったのだ。だが佐知子叔母は
「それがどうしたの! 私だって背はちんちくりんだけど、今の旦那をゲット出来たわよ」
 佐知子叔母は確かに背が低い。おそらく百五十センチあるかないかだと思った。
「それは、叔父さんが叔母さんの事が好みだったからでしょう?」
「まあ、結婚してから『トランジスタグラマーが好き』とは言っていたけどね」
「トランジスタグラマー……何それ?」
「良いのそんな事は。大事なのはその雅人くんの好みが、あんたのような子かも知れないと言う事よ」
「そんなの判らないよ」
「だから告白するんじゃない」
「代償が大きいよ。駄目だったら立ち直れない」
「男なんて腐るほど居るんだから、頑張れ!」
 由美はそりゃ自分は言うだけだから、とは思ったが
「ホワイトデーに女子から告白して笑われないかな?」
「そんな事は無いと思うけど、そんな小さな事を気にするような男なら、こっちから振っちゃいな。大した男じゃないよ。女の子の純真な気持ちを大事にしない男なんてクズさ」
 由美は「クズ」は言い過ぎだと想ったが、何となく告白する勇気は叔母から貰えた気がした。
「ありがとう。やってみる私」
「うん。頑張んなよ」
 佐知子叔母は。その後帰宅した由美の母に庭で採れた夏みかんを渡して帰って行った。

 ホワイトデー当日。由美はもう一度綺麗にラッピングし直して学校に持って行った。どの様にして告白しようか考えていたが、結局ストレートに告白するのが間違いないと想った。問題はそれをどう伝えるかだ。
 学校ではそれぞれバレンタインに告白された男子が女子に色々とお返しをしていた。中にはもう既に交際している者も結構居て、クラスの雰囲気はいい感じになっていた。
 授業の休憩時間に教室の外に出て歩いていると、廊下の角で不意に制服の袖を引かれた。誰だろうと思うと雅人だった。
「放課後校舎の裏に来て欲しいんだ」
 雅人はそれだけを言うと教室に戻ってしまった。その言葉だけで胸がドキドキした。由美は雅人の用事は何かと思ったが、自分が告白するには良いチャンスだと考えた。自分が雅人に告白する事ばかりを考えていて、それ以外の事に全く考えが及んでいなかったのだった。

 放課後由美は約束の場所に向かった。そう言えば雅人と里沙はどうなったのだろうと思った。二人が交際していると言う噂は未だ耳にしていなかった。
 校舎の裏には既に雅人が待っていた。
「ごめん。遅くなって」
「いや僕も来たばかりだから」
「話って……実は私も大事な話があるの」
 思いの丈を振り絞って口にした。すると雅人も
「今日はホワイトデーだろう。だからさ……その本当はバレンタインに告白されてそのお返しに返事をするのが本当なのだろうけど。由美ちゃんからは告白されていないけど、これを受け取って欲しいんだ」
 そう言って雅人が出したのは綺麗にラッピングされたお菓子だった。
「あ……実は私、バレンタインの日、雅人くんに告白しようとした時に里沙に先に告白されて、自信なくしてしまっていたの。でも、やっぱりちゃんと告白しようと思って今日、バレンタインの時に渡すつもりだったチョコを持って来たの」
 由美はそう言って自分もチョコを差し出した。
「じゃあ、僕が先に受け取るね。ありがとう! 大事に食べます。今度はそのお返しだよ。これは僕の気持ちです。受け取って下さい」
 差し出されたお菓子を受け取ると雅人は
「開いてみて」
作品名:告白 作家名:まんぼう