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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K 「SOSの子守唄」

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第3話 ホロシミュレーション



この星の環境で生物を育てるのは容易じゃないわ。遺伝子レベルでの改造が必要。
でも、新しいラボのホロチャンバーは、スゴイ。

その部屋の中が立体映像で満たされ、まったく別の空間がそこに現れる。プログラム次第で、どんな場所でも再現できるのは以前から知っていたけど、それらはすべて現実と変わらないわ。手に取ってみても本物としか思えない。部屋の外に持ち出すことは出来ないけれど、長期に及ぶシミュレーションのためには、そこでは実際に食べて、人間の体の栄養とすることまで出来てしまうの。

私たちは、この星の環境に適応できる植物を作り出すのに、どう遺伝子を組みかえるべきかいろいろ試してみた。時間を早めて高速で再現すれば、あっという間に結果が得られる。そして1000回を越える試行錯誤の末、最適な方法を見つけ出すことに成功した。
この星は、きっと緑に包まれた惑星となることでしょう。やがては酸素が増えて、呼吸もできるように。


タックが「ニャー」って鳴いた。餌の時間。私の足に擦り寄ってくるのは、おねだりの合図。歩きづらくて面倒だけど、こういう瞬間が好き。
ケイには擦り寄ったりしない。擦り寄っても、指で摘み上げられてしまうものね。

ケイは、お願いすると、作り笑顔で何でも聞き入れてくれる。とても忠実。
私が上官に当たるわけだけど、命令はしない。彼の最新の科学知識は、私にとって、とても役に立つわ。この先、彼無しじゃ、この星の開拓なんて考えられないくらい。

私は、基地にもっと窓がほしいから、ガラスを生産しようと思っていたの。
材料の珪素は、どこにでもごく有りふれた物質。シリコンの材料にもなるから、半導体としての需要にも役に立つ。この星のエネルギー資源の調査をしながら、高純度の珪素を探していたら、ケイが基地から30kmほど離れた場所に、酸化珪素の層を発見してくれた。

おかげで大量の強化ガラスを作ることが出来て、基地を覆う天井ドームは、ガラス張りになった。明るくなって、家畜たちも喜んでくれているかしら。
これで、ほんの僅かだけど、昼間のエネルギー消費を削減することが出来たわ。

この未開の星では、エネルギー問題は重要なの。今までは船で使用していた万能元素「エタニチウム」からプラズマを生成してきたけど、残り15年分ぐらいしか残っていない。基地の規模が大きくなっていくと、更に不足してくるわ。

原始的な放電現象からプラズマを得ることはできるけど、宇宙船を動かすほどの力を、易々とは得られない。エタニチウムを節約しておきたいから、今はなるべく電気をエネルギーに生活しているの。まるで山奥のキャンプみたいね。

ホロチャンバーでシミュレーションしてみると、この星の環境では、エタニチウムが存在する可能性は極めて低かった。でも、代用品の「インフィニチウム」なら手に入りそう。地下300Kmより深いところに存在している可能性がある。
取り出すのに一苦労。作業にはプラズマを大量消費することになるし、インフィニチウム自体が、とても不安定な物質だから、安全対策にもかなりのエネルギーが必要になってしまうわね。一か八かの賭けには出られないわ。
これも最善策をホロシミュレーションしてから、実行しよう。