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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編

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そぞろゆく影



「足音が聞こえるようになったのは、お嫁さんの第二子の妊娠がわかってすぐのことです」

広い客間で、瑞、颯馬、郁は、志帆と潤子と立派な座卓を挟んで向かい合い、夜な夜な聞こえるという足音についての話を聴いていた。

「必ず、夜ですね。もう二か月ほど続いています。この屋敷は…これを見てください」

机の上に、志帆が家の見取り図を広げた。

「ご覧の様に、廊下がぐるりと繋がって、平屋の屋敷の周りを囲む形になっているのです。どの部屋からも、庭園が見えるようにと設計されたそうで。だからどの部屋にいても、足音が聞こえます。足音は、廊下をぐるぐる歩き回っているんです。姿は見えないけれど」

瑞はうなる。よく聞くお化け屋敷のポルターガイストのようだが…。

「猫とかではなく?」
「猫はいません。軋み具合から言って、人間が体重をかけていると思うんです」
「足音は、一人?」
「ええ、はい」

夜な夜な歩き回る、姿の見えない何者か…。

「実際に危害を加えてくることはないの?」

湯のみに自分でおかわりのお茶をつぎながら、颯馬が尋ねた。

「ないです。歩き回るだけ。姿も見えません。ただ…わたしはそれほど気にならないのですが…兄はノイローゼのようになってしまって…」
「気にならないの?」

志帆に聞き返す。

「ええ。ああ、またかって。慣れちゃったのかな。怖いなとは思うけど、放っておくと消えるし。特に害があるわけでもなくて」
「潤子さんも、聞いたのですか?」