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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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あなたが残した愛の音。

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 ある日の放課後、ひとみ先生は、博之の所属するバスケットボール部が練習している体育館にやって来た。
 体育館の入り口に立って、中の様子を伺っているのを、博之が気付いて手を振った。先生は軽く手を上げて、裸足で中に入って壁際の長椅子に座った。クラブの顧問の先生が、博之が手を振ったのを見て、ニヤリと笑ったのを博之は気付いていた。


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「ひとみ先生がクラブの練習を見に来るようになったのは、夏前ぐらいだったと思うんです。それからも、ちょくちょく顔を出されるようになりました。顧問の先生が若い男性教師だったので、誰彼と無く、二人の怪しげな噂話をしているのを、聞いたことがありました。僕もちょっと嫉妬していましたけど、他の教師と交際されていたというようなことは無かったです」
「母から聞かれたんですか?」
「ええ。実は、生意気かなと思いますけど、聞いてしまいました」


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「バスケットしてる人って、すごく賢いと思うの。あんなに早く動き回ってるのに、的確に判断してパスが出せるなんて」
 ピアノを練習する博之に、ひとみ先生が言った。

「そうかな? 慣れたら普通だけど。ピアノを正確に弾ける人の方がすごいよ」
「木田君は、スポーツもできて、勉強も成績いいって聞いたわよ。おまけに音楽もできる。女子が取り合う理由が分かるわ」
「先生は恋人はいないんですか?」
「今は、いない・・・のよねぇ」
恥ずかしそうに、苦笑いしながら話してくれた。
「今までは?」
「もちろん、大学の時はいたわよ! 私だってモテるのよ」
「見れば判りますよ」

「私、クラブの練習の邪魔してないかしら。女子部員の視線が怒ってるように感じるんだけど」
「一部は敵対意識あるかもしれませんね。俺は先生が来てくれると嬉しいです」

 この時のひとみ先生は、負けず嫌いな感じの真顔で話していた。


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「それから夏休みに入ってからも、用事が有ったのか知らないけど、先生はたまに学校に来られて、蒸し暑い体育館の中で、バスケの練習を見ておられました。体育館の隣にはプールがあって、そっちの日陰のほうが涼しいのに、僕に会いに来てくれているんだと思って、とても嬉しかったです」
「きっとそうだったんです。その話聞いたことがあります。それで、バスケットボールも急に好きになって、面白いから毎日見に行ってたって」
「ええ。確かに2学期からは、毎日来てくださいました」