彼岸島短文詰め
明篤
【ハロウィン】
帰宅すると篤が店番をしていた。
今日は珍しく残業なしで帰って来たのだろうによくやるよなと、兄を横目に家に入ろうとすると、店にいた篤が手招きをする。
近寄っていくと、篤はリボンで結んである白い包みを差し出した。商工会のハロウィン企画で町内の子供に配った菓子の残りをくれる、という事らしい。
受け取ろうとすると、なかなか渡さない。首を傾げてん?、と催促してくる。
「……トリック・オア・トリート」
渋々もそもそ口の中で呟くと、篤は満足そうに包みを渡し、店番に戻った。
全く、高校生にもなる弟に言わせて嬉しがるセリフだろうか。
あんた全然知らないだろうけど、こっちの本音は、子供にやる菓子なんていらないから、トリックの方なんだと余程言いたくなった。