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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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映画 戦国生徒会

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 山頂に着くと、もう日の出は始まっていたが、昨夜の打ち合わせ通り、桐谷が朝日をバックに博之の背後からカメラで狙い、近藤は斜め下から博之の表情を狙った。しかし、息が荒くてヒィヒィと言う声が入ってしまっている上に、手振れがひどく補正が効かないくらいに揺れていた。
 博之は急いで上着を脱ぎ捨て、下に着ていたジャージ姿になり、生徒会長印を探したが、
「ない。ない。ない!」
それは小道具係の杉田が持っていたので、山頂にはまだ届いていなかった。仕方なく、その辺に落ちていた石ころを右手に掴んで、天に突き上げた。その瞬間、遥か下から見上げていたスタッフから、一斉に笑い声が上がった。しかし、博之はハアハアと鼻の穴が大きく開いたままの表情で、演技どころではない。
「さんそ・・・酸素が足りん」
 後にこの動画は、スタッフの大爆笑を誘い、映画本編の後にNG集を追加する企画へと発展した。

 それから5分後、スタッフ本体がようやく山頂に到着した時には、3人は仰向けに倒れていた。
「撮れたか?」
と聞く中川に、近藤は手を横に振るだけだった。
「キャーきれい!」
と歓声を上げる女子に、倒れている3人は心底うるさいと思った。千鶴は笑いながら博之に駆け寄った。その時、近藤はおそらく寂しい気分でいただろう。
 少し日は昇ってしまったが、小道具の会長印を手に持って、もう一度斜め下からのカットだけ取り直しがされた。その後、全員で御来光バックの記念写真を撮って、それぞれにツーショット写真や、グループ写真も撮った。
「キッド君、一緒に撮ろ」
千鶴は博之とのツーショットを写真部の金城に撮ってもらったが、やはり近藤とは撮らなかった。

 山頂から見下ろすと大きな青い池が見えて、その周辺に高山植物が花を咲かせていた。スタッフたちは、小一時間その周辺を散策して、ハイマツの茂みに特別天然記念物の雷鳥を見付け、静かに大騒ぎした。その後、再び登山バスに乗って下山し、麓のターミナルからは、ロケバスで平湯温泉と飛騨大鍾乳洞見学に立ち寄って、全員、車中爆睡で帰路に着いた。
 因みに登山部の覗き行為は夏休みの内に、桐谷が交際相手の金城に話して、周知のものとなってしまった。

作品名:映画 戦国生徒会 作家名:亨利(ヘンリー)