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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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映画 戦国生徒会

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 香織は博之に駆け寄った。博之は少し困った顔をしながら、自転車を降りた。
「歩きながら話してもいい?」
「ああ」
博之と香織は自転車を挟んで歩き出した。方角は香織の家の方に。
 千鶴と近藤はその様子を暫く見ていた。
「あの二人、よりが戻るかな?」
近藤が千鶴に言った。
「うふ、難しそう」
と千鶴は意味深に答えた。

 香織は制服に着替えていたが、髪の毛は汗で濡れたままだったので、スポーツ用の薄紫のヘアーバンドを着けたままだった。博之には、この時の香織の見た目が新鮮に思えた。
 香織は少しの間、黙ったまま歩いて、何か言い出そうとしたが、言葉に出来ない。
「どうしたの。落ち着いて話してよ」
香織は呼吸を整えるように3回息をして、
「もう泣きそうなの」
と言って、また声を詰まらせた。
「またここで泣くなよ」
この言葉で、香織に気合が入った。
「もう謝っても遅いかな」
「謝ることはないよ。あの時の状況じゃ、仕方ないことだと思う」
「じゃあ、このままでもいいの?」
「俺にも悪いところがあったと思うし、香織が怒ったのも分かるけど、許し合っても何も変わらないと思うんだ」
「そんなことない。私もう我がままばかり言わないから」
「そうじゃないんだ。俺はもう新しい道を進み始めてるんだ」

(どういう意味!?)

 香織は困惑した。ついこの前まで二人で仲良く帰っていたこの道が、突然、季節がまったく反対になったぐらいに感じ、今ここにいることが場違いなような気がした。
「もう元に戻れないっていうこと?」
「戻っても元通りにはなれないってこと」

 そのまま暫く一緒に歩いたが、香織はこれ以上何も話せなかった。住宅街の交差点に差し掛かり、博之は、
「ここで帰るね」
と言って、自転車に乗った。
 そのまま走り去ろうとする博之を引き留めたかったが、香織はこれしか言えなかった。
「別れても好きでいていい?」
「うん」
博之は軽く振り向いたが、香織の顔は見ずに言った。そして、自転車をこぎながら、(俺も好きだよ)と思った。

作品名:映画 戦国生徒会 作家名:亨利(ヘンリー)