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朧さんと奈落の新キャラシリーズ

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本当の願い


 襲い掛かる男達を、俺は次々と殴り付けた。
 殴られた男の顔が歪んで、男の体が赤く染まる。

(やっぱり人を殺すのは最高だな)

 くくく、と笑い声を上げながら男達を始末していくと、複数の男達と交戦している餓鬼の姿が視界に映った。
 餓鬼は毒針を飛ばして男達を始末していく。無駄なく敵を殺す餓鬼の背後に、一人の男が襲い掛かかった。

「!」

 俺は直ぐさま餓鬼に駆け寄って、男を殴り付ける。男は呻き声を上げて倒れ伏した。

「柩さん……!」

「油断するんじゃねぇ!」

 餓鬼は頷いて、持っている錫杖を男に突き刺す。
 餓鬼と背中を合わせながら、襲い掛かる男達に拳を叩き続けると、やがて敵は全滅したのか、襲い掛かる男はいなくなった。
 額に滲んだ汗を拭って餓鬼に視線を向けると、餓鬼は俺に笑いかけた。

「ありがとうございます柩さん、俺を助けて下さって」

 久しぶりに見る餓鬼の笑顔に意表を突かれて固まると、餓鬼は笑みを浮かべたまま続けた。

「柩さんって……悪い人じゃないですよね。本当は、貴方は……」

「うるせぇ」

 餓鬼の言葉を遮り、餓鬼を睨み付けると、餓鬼はびくりと肩を揺らした。

「悪い人じゃねぇ?お前、俺に騙されたことを忘れたのか?」

「…………あれは、許せません。でも……貴方は、俺を殺さなかったじゃないですか」

 餓鬼は怯えたような顔をしながらも、真っ直ぐに俺を見据える。

「いつでも俺を粛清出来るのに、一度奈落を裏切った俺を見逃している……それは、何故ですか」

 餓鬼の問い掛けに言葉に詰まり、押し黙ると、餓鬼は俺を見つめた。餓鬼を見返すことが出来ず、俺は餓鬼から視線を外す。

「……お前を見逃す理由?そんなものねぇよ」

 俺は笑みを浮かべる。

「ただ、お前が苦しんでいる姿を見てぇからだな」

 餓鬼は押し黙るが、やがて「……嘘ですね」と落ち着いた口調で告げた。

「何故、俺の目を見ないんですか。柩さん……貴方は本当は、」

「……うるせぇ!!」

 声を張り上げて餓鬼の胸ぐらを掴み上げると、餓鬼の肩が震えた。

「お前に……俺の何が分かる」

 餓鬼を睨み付けると、餓鬼は顔を歪めたが、俺を睨み返した。

「……分かりますよ。貴方が本当は……自分の傍にいてくれる人を求めていることは」

「……!」

 目を見開くと、餓鬼は悲しげな顔をした。

「俺に目を付けたのも、そうですよね?貴方は誰かと関わりたくて……誰かが傍にいて欲しくて、偽りの自分を演じた」

「……何を、言ってやがる……」

 餓鬼の胸ぐらを掴む手に力を込めると、餓鬼は苦しげな顔をして――微笑んだ。

「誰かが傍にいて欲しいなら、そう言えばいいじゃないですか。俺が……貴方の傍にいますから」

「…………」

 餓鬼の顔を凝視して、俺は餓鬼の胸ぐらを掴む手から力を緩めて、餓鬼から手を離す。

「……騙した相手に言う台詞とは思えねぇな。お前は大馬鹿野郎だ」

 ここまで馬鹿だと救いようがねぇな。
 だが、面白いと思っている己も存在していて、くく、と笑うと餓鬼は目を伏せた。

「俺も、同じですから。俺も、誰かが傍にいて欲しいと思っている……」

 悲しげな、切なげな顔をする餓鬼に、俺は掛ける言葉が見付からず、「……そうか」とだけ返す。
 餓鬼は辺りを見回して、俺を見る。

「……柩さん、帰りましょう」

「…………嗚呼」

 歩き出す餓鬼から少し距離を取って、餓鬼に続いて俺も歩き出す。
 餓鬼と歩きながら、俺は餓鬼の言葉を思い出す。

 ――誰かが傍にいて欲しいなら、そう言えばいいじゃないですか。俺が……貴方の傍にいますから。

「……馬鹿野郎」

「はい?」

 此方を見る餓鬼に、何でもねぇと返して、これだから俺は餓鬼が大嫌いなんだ、と心の中で吐き捨てた。