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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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冰(こおり)のエアポート

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16:05 あなたと出会えたくらい



エグゼクティブカウンターのメンバーは全員、またしてもバスに乗れなかった。赤ら顔の男が怒りだして、バス停の係員に中国語で文句を言いだした。
(相手は航空会社の人じゃないから、文句言っても仕方ないのに)
博之はもう絶望した。すでに40分は冷凍庫に入れられているのと同じだった。
その途中、赤ら顔の男が博之を指差した。博之も中国語が堪能だったので、話の内容は聞き取れていたが、薄着でいる自分を引き合いに出され、怒りをぶつけているのには、知らぬ顔をしようと思った。

この頃、温度計は「-13℃」を表示していた。夕方が近付き、気温は下がり始めていた。
また風が強く吹いて、博之は全身を硬直させて震えた。寿美代もマフラーをしていないので、首を亀のようにダウンジャケットの襟に引っ込めた。
「スマホが全然熱くなりませんよ。冷たいままです」
「私のもダメみたいです」
「PCも冷たい鉄板持ってるみたいな感じで、お腹が冷えそうです」
「さすがにこの気温じゃ、冷却されちゃうみたいですね」
「そう言えば、この寒さなのに、マクドナルドでソフトクリーム売ってるんですよ。きっと気温よりソフトクリームの方が温かいんですかね」
「もう、なんだか頭おかしくなってきちゃったわ」
博之はPCとスマホをショルダーバッグに片付けて、PCの保護袋だけを残した。そしておもむろにそれを頭に被った。ここまで我慢していたが、遂に被ってしまった。
寿美代は不憫そうな眼をして博之を見た。確かに滑稽な格好だったが、今はどこにも博之を笑う者などいない。
「耳が痛い」
博之はそう言って、頭の袋を無理やり引っ張り下げて、耳を中に入れた。それを見て、寿美代が突然手袋を脱ぎ、正面から両手で博之の耳を押さえて温めた。