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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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冰(こおり)のエアポート

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15:20 私たちだけ忘れられてる



「まあ、大丈夫ですよ。バスが来るまでの辛抱か」
そう言ったものの、博之は無謀な挑戦だと知っていた。なぜなら、以前こんな気温の時にホテル周辺を散策して、顔の筋肉を思い通りに動かせなくなるほど寒かったことを思い出していた。
屋外に出ると、強烈に乾燥した冷気がセーターを一瞬で通り抜けてくるのを感じた。寿美代は防寒具で完全防備した格好で、両手に手提げバッグと紙袋を提げて、小躍りするように、
「寒いー」
と我慢できずに言った。

8番乗り場に着くと、先ほどエグゼクティブカウンターにいた乗客が10人ほど並んでいたが、全員上着は着用している。
「大丈夫ですか?」
寿美代は心配して聞いた。
「ええ。寒いですけど、死ぬほどでは」
「もしよかったら、ロビーで待ちますか? 私が並んでいますから」
しかし、それには問題があった。このバス停がロビーのある建物からちょっと離れているということだった。大きな駐車場の真ん中にバス停は位置していた。
「バスが着いてから僕を呼んだんじゃ、間に合いそうにないので、ここで我慢しますよ」
この場に並んでいるのはエグゼクティブカウンターにいた乗客だけだったので、きっと特別に専用バスが来るんじゃないかという期待もあった。しかし、その期待は大きく外れることとなる。

博之は体の力を抜くと、ガタガタと震えてしまうので、頬の筋肉からつま先まで力を入れた。でも風が当たると耳がちぎれそうだった。ショルダーバッグの中に入れていたノートPCの保護バッグに気付いた。それは中身がスポンジでファスナーが付いた袋だった。それを取り出して、両手を入れた。
(頭に被りたいけど、それは恥ずかしいな)