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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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赤秋(せきしゅう)の恋

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7

   

「そんなわけですから、お給料はあの時の未払いの代金としてお支払いするつまりですから、受け取れませんから」
「お金はいくらあっても邪魔にはなりませんよ」
2人のパートの主婦は雅夫と春のやり取りに
「お二人がいらないのならいただきましょうか」
と笑った。
雅夫は
「とりあえずいただきましょう。ありがとう」
と言った。
メインのビーフカレーがテーブルにのった。
「春さんは今は何をされているのですか」
「一応画家」
「夢が現実に、いいな」
「子供たちにも何か夢を持たせたいわね」
主婦が言った。
「つらい時、力になります。夢は希望や勇気もくれます」
「俺も夢をみるか」
「どんな夢」
と春が尋ねた。
「それは寝てみる夢かな」
「馬鹿みたい」
主婦たちは雅夫の見当違いな夢に大笑いをした。
雅夫の内心は春への恋であったが、そんな宝くじの1等を当てるような夢を打ち明けることは出来なかった。
食事が終わり
「今日で辞めさせていただきますが、短い間でしたがお世話になりました」
と春が挨拶した。
雅夫は突然の事で、真っ先に仕事の事が気になった。しかし、春に留まって欲しいとは言わなかった。春への恋を終わらせなくてはいけないと思ったからだ。
 レストランを出ると、春は雅夫にハグをしながら、ほほに唇をあてた。
「さようなら」
雅夫は赤面した。幸い飲酒の赤みもあり、主婦たちには気づかれなかったようだ。
「社長さん得したね。美人さんだったし」
「明日から、パートさんが見つかるまで、時間延長頼むよ」
雅夫は春から受け取った給料を
「2人で折半」
と渡した。
「2時間くらい頑張ってみる」
主婦らは機嫌よさそうだった。