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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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赤秋(せきしゅう)の恋

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2


 仕事が忙しくなり、近所から来ている主婦2人に、時間の延長を依頼したが、2人とも小学生を抱えて、3時には帰りたいと言った。自動車関連の仕事は、納期がうるさい、また、不良品は絶対に許されない。雅夫が作業する部品は、不良品に対して緩い方であった。しかし、ドアの内張りの、右左のスタンプであっても、取り付けるための印であるから、作業員に分かればよいだろうと考えていたが、少しのインクの汚れも指摘された。ドアの中に隠れ、目には見えない部分なのにと雅夫は思ったのだが、自動車産業は完ぺきを目指すのだと言った。それならそれなりの工賃が欲しいと言いたいが、言ってしまえば仕事は受けられない。分かってはいるが腹は立つ。
 雅夫は作業場の外壁にパート募集の張り紙を貼った。
    パート募集
時給 800円
時間 4時間以上
 年齢、学歴不問
貼りだして1時間で春が訪れた。人どうりの多いところではないし、店も近くにはない。雅夫の敷地内にあるタバコと飲料の自動販売機があるくらいだ。この道を使うのは決まった人ばかりなのだ。
「履歴書とか必要ですか」
「勤めていだだけるのでしたら、お住まいと電話だけで結構です」
「とりあえず、電話だけでよいですか」
「いいですよ、お若いですからね。住所は結構です。勤めてから休まれると困るので電話連絡するときのために電話番号だけで・・」
「では明日からお願いいたします。8時間お願いします」
雅夫は春は時々勧誘に来るキリスト教の信者かと思った。彼女たちの様な涼しい笑顔をしていた。だから、勤めてもすぐに辞めてしまうだろうとは思ったが、兎に角人手が欲しかった。