小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

CLOSE GAME

INDEX|70ページ/86ページ|

次のページ前のページ
 

ふたり


  
 目を開けるとベッドの上だった。夢だったのかと思ったが、違った。なぜなら、そこは家のベッドだったから。そして、ボクはボクを見下ろしていたから。
 ベッドの上、小さなボクがいる。
「お外、行きたい」
 喘鳴の響く声でお母さんに縋るボク。
「ダメよ。まだゼイゼイしてるでしょ?」
「みっくんと遊ぶって約束した」
「また今度にしましょうね」
 “今度”なんて来る事はなかった。なぜなら、その直後、入院してしまったから。
 小児病院というのは、子供はお見舞いには来れない。だから、入院している間は、両親以外は担当医と看護士、後は、同じ境遇の子供だけが話し相手だった。
 しばらく入院して、久しぶりに学校へ行く。登校するボクにクラスメートが驚いている。
「ねぇ。今日さ……」
 勇気を振り絞って話し掛けてみるけれど、返ってくる答えはどれも同じ。
「だって、すぐに咳が出ちゃうでしょ?」
「たかくんが入院になったら、ぼくのせいになっちゃうもん」
 ボクの前から、友達がいなくなった。
 辺りが暗くなる。これは、真夜中。咳き込んでいるボクをお母さんが抱きしめている。
「大丈夫よ、たかくん。もうすぐ救急車が来るから。大丈夫よ」
 ボクの背中をさすりながら、お母さんが泣いている。何日も軽発作が続き、お母さんもボクも眠れない。そして、体力が落ちた瞬間に重度の発作が起こる。お父さんは出張が多くて、いつも、お母さんがいてくれた。
「お母、さん……。ごめん、なさい……」
 ボクが弱くて、お母さんをいつも困らせる。
「たかくんは悪くなんてないのよ」
 救急車の中、ボクの頭をそっと撫でてくれる優しい手。
 ボクがいなければ、お母さんはちゃんと眠ったりお仕事出来たりするんだ。きっと泣いたりしないで、ずっと笑っていられるんだ。ボク、お母さんの笑ってる顔、大好きだよ。
「たかくんがいなくなったら、お母さん、毎日泣いちゃうんだからね」
 抱きしめてくれるお母さんの胸は温かい。
 じゃ、ボクが“いなく”て“いる”のがいいの? だったら、ずっと病院にいればいいんだ。お母さんも寝れるし、ボクもすぐに診てもらえるから安心だし。
「あのね、お母さん。病院にも学校があるんだって」
「院内学級の事? たかくん、行きたいの?」
 一年の殆どを病院で過ごすのなら、ここで友達を作ればいい。単純に、そう思った。
 けれど……。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒