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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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ここに来た11 コロンビア峡谷

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11 コロンビア峡谷(アメリカ オレンゴン州 ポートランド)



大学の時の恋人が、留学していたのはこの街だった。
そこで仕事で8ヶ月ほどを過ごした。
1年を通して、天気のいい日が少ないという印象だ。
真夏だけ数日晴れて、残りはほとんど曇りか雨。初秋には道端に雑草のように生えるブラックベリーは食べ放題。真冬は雪が積もった。

ジメジメと暗い街として紹介されることが多いようだが、そのイメージにぴったりなのか、滞在中にバンパイヤと狼男が登場する映画のロケが行われていたようだ。
その作品は全米で大ヒットして3部作が作られた。興味を持って観てみるとなじみの景色がいくつも登場している。

その一つがマルトノマの滝。
コロンビア川沿いを走るハイウェイの南側は、直立した岩の壁が続き、いくつもの水筋が天辺から流れ落ちている。
その中でも水量が多く、見事な軌跡を描くこの滝は観光名所として知られ、多くの見物客が集まっていた。

落差190メートルは、滝壺のすぐ近くまで行けて、全米でも屈指の迫力が味わえる。さらに瀑布上からも見物可能だ。
近くで見上げると、周囲は霞のかかった針葉樹に囲まれて、まさにモンスターが隠れ住んでいる雰囲気ありありだった。

私は滝が好きだ。その周辺の滝を可能な限り見て回った。すべての滝に名前があるが、しっかりは覚えていない。
そのローカルな道路を車で進んでいくと、断崖の頂上にあるビスタハウスに辿り着いた。

その展望台から、はるか眼下のコロンビア川を見下ろし、左右の見事な大峡谷を見ていると、すぐ近くの崖に突き出したステージのような岩があるのに気が付いた。
なんとその上に人が一人座っていた。人ひとりが上るのがやっとくらいに見えるあの天辺に、私も立ってみたいと思った。
かなり危険な気もするが、もともと高所には恐怖を感じない体質なので、林の中を歩いてその岩に行ってみると、先ほどのクライマーとすれ違った。
「お前も上るのか?」と聞かれた。
「トライしてみたい。」と答えると、
「神の恵みを」みたいな事を言われ、気分も高まった。

でも、その場に着くと意外に広く、気を付ければなんでもない岩だ。
経験したことの無い景色の壮大さは、人間の脳では普段見慣れているものと同じように判断して、小さく感じてしまうのだと実感した。
柵も何も無いそこに立ってはじめて、地球そのままの感動を味わえた。