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関西夫夫 ポピー3

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翌日は、ええ天気やった。ビジホをチェックアウトぎりぎりの時間まで居座った。というのも、いろいろといたしてたので、俺の腰が動かんかったから、ギリギリになった。近くの温泉は予約してあるのでタクシーで向かうことにした。さすがに電車やバスの移動はキツかったから、俺の旦那が奮発しよった。
「まあ、今日の帰りの交通費が浮いたんやから、これぐらいはええ。温泉つかって、のんびりしてメシ食おう。」
「おう、そうさせてもらおうやないか。」
 タクシーで旅館の前まで届けてもらって、まずは温泉。朝は亭主が朝マクドをテイクアウトしてきて食わせてくれたんで、それほど空腹ではない。
「チーズケーキも美味かったで? ただなあ、熱々なんよ。」
「すまん、俺、それも一生食わんで、ええわ。」
 一応、人目を気にして旅館の貸し切り露天にしてくれたから、俺もちゃぽんと風呂につかった。腰に優しい。ホテルの屋上にあるので景色もよろしいのが売りやとかで、のんびり二人して鑑賞させてもらった。花月が相手やと気遣って喋ることもないから、のんびりしたもんで、癒されるわーと伸びをする。
「五月蝿いヤツらなんか? 」
「まあ、あっちは気楽な慰安旅行やからな。呑んで食うて、騒いではるわ。一々、うだうだと質問しやがるから面倒でな。」
「まあ珍しいんもあるんやろ? なかなか、男の愛人っちゅーのも、おらんやろーからなあ。」
「それは言われた。散々に言われた。まだ言いそうや。」
「適当に流しとき。それは、しゃーないわ。うちの嫁、色気ムンムンやし。」
「は? とうとう、脳みそ湧きまくって虫が大量発生したみたいやな? 色気なんかあるかいっっ。この鶏がらの体に欲情すんのは、おまえだけじゃっっ。」
「そうか? まあ、長年、この鶏がらに付き合うと、これが一番楽なんよ。もう、一々、探さんでも、ええとこわかってるし。こっちも、どこをどうしたらええかわかってるしな。」
 しみじみと、俺の亭主は、俺の手を持ち上げておっしゃる。まあ、確かに、俺も適当にしてもらって適当に気持ちええから、楽っちゃー楽なんで、うんうんと頷いてたりする。
「あっちの赤いのも入ろ。あれがメインやさかい。」
「はいはい。・・・・今日は中華街とか港方面はNGなんやが、どーする? 」
「夕方まで借りてあるから、ここいらをブラブラしてたら、ええ時間とちゃうか? また七時か? 」
「まあ六時には戻るわ。九時には帰れるから今日中には、うちにつける。」
「ほな、メールくれ。駅で待ってる。俺、中華街でメシ食ってくるわ。そっちも中華なんやろ? 」
「せやなあ。俺は、おまえの料理以外は、どれでも一緒やけど。」
 家で花月の作るメシを食うのは、うまいと思うが、それ以外は、そこそこというのが正直なとこで、俺にとっては適度に冷まされてあっさりした花月の料理だけが味までわかるものや。てなわけで、普段の外食は、適当でしかない。そう言うと、俺の亭主は、二カーと笑って立ち上がった。
「ほれ、移動や。長いこと浸かると逆上せるからな。」
「はいはい。」
 貸切でも透明なお湯と赤いお湯の湯船があって豪勢な造りになっている。どちらも、ここいらの源泉で、成分も違うらしい。赤いほうがぬるいので、そっちへちょろっと浸かって、俺は縁に座った。あんまり浸かると逆上せるから冷まさなあかん。
「レイコ飲みたい。」
「出たら注文しぃ。腰は、どーや? 」
「だるくはなくなった。せやけど、もうあかんで? これ以上にやったら起き上がるんが無理になる。」
「なんぼなんでも、貸し切りとはいえ、こんな公共の場所で青姦せなあかんほど餓えてへんわ。」
「さよか。ほな、メシ食ったら昼寝させてもらおー。俺、睡眠時間短い。」
「俺も短いねんけど? 」
「おまえは、だるだる晩飯食うて、居眠りこけられるやんけ。俺、接待でメシやから疲れるんでっせ。」
「まあ、飽きたらトイレとか言うて抜けてロビーで寝たらええんちゃうん? 」
「そんな暇あるかなあ。割としつこく喋りかけられるんや。ツレションとか言われそーやぞ? 」
「それ、女子高生のノリちゃうん? ああ、見たいんか? うちの嫁のブツ。」
「はあ? どこの変態よ? 見て楽しいやろか? 俺、おねーちゃんのでも見たないで。」
「俺も見たないけど、ほら、使わへんから退化しとるとか思てるかもしれへんやん。」
「ないわぁー。退化って・・・一応、使用してるんやけどなあ。」
「入れたりはせぇーへんから、あちらさんは使ってるとは思わへんのとちゃうか? 」
「・・・あほやな? 」
「実務知らんかったら、そんなもんちゃうか? 」
 バカバカしく生々しい話をして部屋に戻ったら、食事の準備がされていた。内線で連絡すると、冷たいビールとレイコが運ばれてきて、ついでにメインもやってきた。
「ソバ? 」
「これやったら、おまえも熱いの気にせんでええやろ? あと、オプションで明石のタコの刺身とかつけといた。」
 ざるソバと天麩羅がメインで、あとは、ちょこちょこと小鉢がついたお膳やった。他に、タコの刺身とか茹でたタコとかが別の膳に用意される。これがオプションでつけたほうらしい。
「ああ、近所やもんな。」
「季節的に鯛は、ちょっと遅いんやてさ。ほな、乾杯しよか? 」
 段取りしたら仲居さんは下がった。浴衣姿で、向かい合って、俺はレイコ、亭主はビールをカチンと合わせる。温泉で喉が渇いてたから、冷たいもんが気持ちええ。それで冷たいソバとくる。よう気のつく旦那やなあ、と、感心する。
「茹でたるんは熱いから刺身あたりからいけ。天麩羅も、ちと待て。」
「へーへー・・・・ああ、こりこりして美味いなあ。ほんで冷たいのが嬉しい。」
「ほんまや。タコって生でも美味いもんやなあ。でも、こういうのは売ってないから、たんと食うとけ。」
「百貨店にはあるんちゃうん? 」
「高いから、あかん。ビールはええんか? 」
「やめとくわ。」
 二人して、そんなことでメシを食って、畳に転がった。腹は満腹やから携帯のタイマーをかけて横になる。これで夕方までは放置されるので、のんびりと寝ていた。
 時間制限はあるものの三時間ばかり昼寝したら、いい感じで目も覚める。チェックアウトして、温泉街をブラブラしてからホテルへ向かうことにした。とりあえず、元町の辺りで花月は降りた。そこから中華街周辺の散策をするらしい。俺のほうは予定通り六時にホテルには入った。まだ、連絡がないのでロビーで読書する。一応、予定は七時なんで小一時間はある。半時間ほど、ミステリーを読んでたらメールや。東川さんがロビーに到着したらしい。こっちもロビーにおるとメールしたら、厳つい顔の東川さんが歩いて来た。
「お疲れさんです、東川さん。」
「お疲れ、みっちゃん。まだ、みたいやな? 」
「みたいですね。」
「日曜で道が混んでるんかもしれん。そうなると、今日は遅くなるかもしれへんな。」
「俺、九時には帰りますで? 」
「ああ、かまへん。明日の仕事があるんやから、それを理由にして退けたらええ。今日は、わしが部長代理で付き合うさかい。」
「浴びるほど呑んでください。泊まりやねんから。」
作品名:関西夫夫 ポピー3 作家名:篠義