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関西夫夫 ポピー2

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会議が終わってから、沢野と堀内とメシに行くことになった。みんなで、一緒に、と、社長は勧めてくれたけど、二人が、「うちのは人見知りなんで。」 と、体よく断りよった。
「ホールで二時間動けたら、御の字やな? 堀内。」
「というか、ホールの仕事なんか忘れてるんちゃいますか? せいぜい、箱の配達ぐらいしかできひんのちゃうんですか? 」
「あとは景品のほうの棚出しぐらいしてもろたら、ええやろ。どうせ、研修やねんからなあ。 平日の午後やったら、ぼんくらでも動けるやろ。」
 つまり最初の神戸は遊ばせて、残りの大阪は体験させるということらしい。ホールの仕事やったら嘉藤さんと佐味田さんに任せてええやろうから、その間に仕事はこなせる。そこいらはスケジュールとつき合わせて、スタッフで決めることにした。
「金は、中部から出る。せいぜい使ったってくれ。」
「せや、みっちゃん、みんなして、おいしいもん食うてきたら、ええわ。神戸やったら肉やな。」
「一日目は、鉄板焼きやったな。」
「にくぅー? 俺、いらん。」
「どあほっっ、神戸牛、言うたら、おまえが普段、食うとる、やっすい肉とは違うんじゃっっ。食うてこんかいっっ。」
「まあまあ、堀内。みっちゃん、鉄板焼きは肉だけやない。イセエビとかアワビなんかもあるで? おいしいのだけ、食うたらええ。客のことは気にせんと好きにしとり。」
「さよか、ほな、夜の宴会だけ顔出して、あとは好きにさせてもらう。宴会も最初だけでええやんな? 」
「かまへんよ。別に、気遣いせんならんこともないわ。」
 まあ、そういうことなら、二日間、夜だけ相手して帰ればええので、俺も気楽や。帰り際に、堀内が前にくれたウイロウを、またくれた。俺の旦那が喜ぶので、おおきに、と、礼は言うたった。


 しかし、や。家に帰って、俺の亭主に予定を告げたら、「はあ? 」 と、ツッコミを食らった。
「ちょ、待て。二日間、夜だけ神戸? しんどいがな。」
「せやけど、泊ったかって次の日も夜だけやし、俺が暇やがな。」
 夜の宴会だけなので、帰宅は午前様になっても家のほうが、ほっとする。まあ、二日も往復三時間近くかけるのは面倒やけど、しゃーない。それに、家やったら、俺の亭主の顔も見られるし、そのほうがええ、と、言うたら、「それやったら、俺が遠征したら、ええんやんけ。」 と、反論された。
「遠征? 」
「せや、近くのホテルに泊って、一泊二日、神戸をいわしたら、ええやんかいさ。夜かて、二時間ほどのことやろ? 」
「花月、それやったら、おまえ、ひとりでメシ食わなあかんで? 」
「別に、ええで。俺もグルメを堪能するわ。ま、俺はB級やけど。なんなら、迎えに行くし。」
「いや、迎えはええねん。せやけど、翌日、夜まで、どーすんねん? 暇やんけ。」
「寝てたらええ。」
「はい? 」
「ホテルには延長ってもんがある。午後まで寝て、ゆっくりしてから昼飯食うて、ぶらぶらしてたら、ええ時間や。」
「金かかる。」
「いや、どうせやったら日帰り温泉入って、メシ食おうか? それやったら夜まで、ゆっくりできるしな。」
「だから、金かかるっちゅーねんっっ。」
「泊まりはビジホにして日帰り温泉を豪華にさせてもらおうか。それぐらいやったら安いこっちゃ。ほんでな、水都。日曜は早めに逃げて来たら、夜中には帰れる。これでええやろ。」
 なんか勝手に予定を組んで、俺の亭主は、いそいそと携帯で調べもんを始めた。まあ、土日で中部の温泉へ泊ろうとは予定してたから、それからしたら安いんかもしれへん。
「明日、何時? 」
「えーっと、ホテルに七時。」
「ほな、家のことして昼から出ようか? メシが二時間として、駅前のビジホ予約して・・・温泉は・・・・」
 携帯で調べて予約してるらしい。ちゃかちゃかと携帯動かして、俺の亭主は、「よしっっ。」 と、声を出した。
「予約完了。駅前のビジホを予約したから終わったら、メールくれ。」
「おまえ、メシは? 」
「適当にする。くくくく・・・何食おうかなあ。神戸やし、中華街もあるし・・・」
「一人でもええのん? 」
「別に、ええで。」
「でも、次の日も晩は、一人やで? 」
「かまへんかまへん。俺は、一人でも楽しめる男や。ついでに買い物しとこー。」
「ああ、せやせや、おまえ、夏の靴いらんか? これでボーナス出んねん。」
 堀内と沢野から、お手当てを出す、と、言われてるのを思い出した。靴以外にもあれば、と、思ったが、俺の亭主も物欲は低い。
「それは有り難い。ほんなら、おまえのと俺のと買おう。それ、探してもええな。」
「他には? 」
「これと言うてはないな。まあ、考えとくわ。」
 考えとく、ということは、ない、という意味なんで、俺も、それ以上には勧めなかった。なんか思いついたら、ということにしとく。


 翌日、午後からスーツ姿の俺と普段着の亭主は外出した。駅への道を歩く。河原の土手には、季節柄、赤やら橙色のポピーが、たんと咲いている。
「くっるまにぃーポピーーーやな? 」
「古いわー花月。それ、古すぎて、おっさんってバレるわー。」
「バレるも何も、きっちりとおっさんやがな、俺。季節で花が変わるから、ここの土手で季節を感じるなあ。」
 ハイツから駅への道は川の土手を通る。季節ごとに、ここには花が咲くので、俺も、ここで季節を知ることが多い。ちょっと前まで菜の花やったが、今はポピーが花盛りや。ゴールデンウィークの頃から、ちらほらと咲き始める。
「誰かヤクでも作ろうと思たんかな。」
「いや、あれは白っちゅー話や。こんなとこで盛大なヤクの畑なんかするかいな。」
「せやな、ポリに捕まえてくれって言うてるよーなもんや。」
 そんな話をしながら駅まで辿り着いて、神戸へ向かう。乗り換えて一時間ぐらいなんで長距離ということでもない。夕方には到着するぐらいの時間なんで、割と空いてた。手荷物は花月のリュックだけ。下着ぐらいしか入ってないので気楽なもんや。
「今晩、何食うん? 」
「えーっと、神戸牛やったかな。」
「あー基本やわな。」
「おまえも牛いわしといたら? 」
「牛かー高いからなー。それより俺はチーズフォンデュに挑戦予定やねん。」
「はい? なんで、そんな暑苦しいもん? 」
「本格的なやつを通年出してるんよ。食ったことないし、熱いから水都はパスしそーやから一人の時に挑戦しとこーと思って。」
「うん、俺はパス。」
 そんな常時、熱々のもんなんか口に入れたら俺は死ぬ。確かに俺は食わへんであろーもんや。
「ほんで明日は中華街で買い食いでもして明石焼きでもいわそーかと思う。」
「牛は? 」
「それほど牛に愛はないなあ。」
「さよか。俺もないけど。俺も明石焼きのほーがええな。」
「持ち帰りしといたるわ。チンして夜食にしたらええ。」
「おおきにー。さっさと帰ることにしよ。」
作品名:関西夫夫 ポピー2 作家名:篠義