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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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聞く子の約束

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第3章 また誘ってくれた



 この前のアイリッシュパブで、森山さんについて知り得たことは、結構厳しい家庭で育ち、歳の近い兄が二人の三人兄妹の末娘。子供の頃からピアノを習っていたがヘタクソ。イギリスに3年ほどの留学経験。今は城跡近くのマンションで一人暮らし。ウォッカが好き。その程度だった。
 2時間ほど飲んでも、半分は他の男性と会話していて、残り半分はほとんど僕が喋っていたので、彼女のバックグラウンドを聞きだすことができていなかったと反省した。

 彼女の魅力で特筆すべきことは、ニコニコ顔。24時間中、23時間は笑っていると思う。彼女自身もそれを武器にしていることは間違いないと思うけど、そうと分かっていても、その術中にはめられてしまうのだ。その笑顔も作り笑顔には見えず、本当に喜んでいるように思える。
 真正面から人の顔を見つめて話をする人で、笑顔の後にもう一度、念押しの笑顔を作る瞬間があるが、その顔が強烈に可愛いかった。その笑顔が欲しくて、笑わせようと必死になるほどだ。

 あのお姉さんはどの学生に対しても、あのように親切に接するのだろうか。しかしあのバイトの日以降、大学のキャンパス内で森山さんと出会うことがあっても、単なる大学職員と一学生の立場のままだった。
 篤志とジュンには、バイトの後に彼女と軽く飲みに行ったことを話してしまったけど、僕の特別な感情は隠した。やはりそのことは、友人たちも羨ましがっていたようなので、調子に乗ると森山さんに迷惑な噂が流れては、彼女に距離を置かれてしまうかもしれないという、僕ながらの計算もあったから。
 とは言え、自分にも彼女がいるので、6歳も離れたお姉さんに恋心というのもそれほど燃えず、このくらいの距離感で十分だった。この次もまた飲みになどと、そんな大それた考えは無かった。

 それから1ヶ月以上、森山さんとは目が合うと会釈する程度で、ほとんど会話も無く過ぎていった。そんなある日、大講堂での授業が終わり、ロビーに出たところのベンチに、森山さんが座っているのに気が付いた。そして彼女に呼び止められて、僕は少し期待感でドキッとした。

「また試験監督のアルバイトの募集があるけど、木田君どうかな?」
わざわざ僕の授業を調べて、ここまで誘いに来てくれたのだろうか。
『また彼女と仕事できるかもしれない。』と思い、即答でOKした。でも今回はTOEICの試験だったので、森山さんは試験監督ではないかもしれない。その場で聞いてもよかったけど友人もいたし、僕の気持ちを悟られるのもいやだったので止めておいた。

 試験当日、そんな心配もよそに、やっぱり森山さんの教室にサポート役で入れてもらえた。
 その日は午前中だけの仕事だったけど、期待通りランチにも誘ってもらえた。この前は奢ってもらったし、今度は自分で払うと約束して前回と同じ店に行った。
 森山さんはこの時も魅力的な笑顔で男心を駆逐してきた。

作品名:聞く子の約束 作家名:亨利(ヘンリー)