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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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蜜を運ぶ蝶

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 インターネットのニュースで『ルシェルブルー』が売春防止法違反で摘発されたと報じられていた。ぼくは浅木の店だと思い住所を確認した。浅木の店であった。ぼくは2度しか店に行ったことはなかったが、ぼくの感じではそんなことはなかった。なじみ客なのだろうか。確かに、意識改革教の体験の時は浅木は全裸でぼくを誘惑したようだったが、それは別の問題だろう。ぼくが結ぼうとした愛人契約は、売春には当たらないだろう。浅木から連絡もないのに、ぼくから電話を入れることもないだろうと、その時は思った。
 ぼくは、浅木に会ってから、意識改革の言葉が常に頭の中に残っていた。生まれた時のスタートが違う,そのとき既に、裕福かそうでないかは決まっている。あるいは、成長し、ある程度の人間は裕福になれるだろう。そのことが幸せなのかと問われれば、でも、貧しかった者が金持ちになれば幸せを感じるのは確かな事だと思う。そのあとから、愛や正義やらの感情から悩むのではないだろうか。
 ぼくが少年のころは、動物(犬、猫)たちの餌も貧しかった。ほとんどが残飯であった。それでも、彼らは幸せだったのだろう。残飯以外に旨い物のあることを知らないからだ。今の日本の動物たちは、貧困な国の子供たちよりも金額の掛る食事をしている。それが、善悪で判断することではないかもしれないが、浅木の意識改革は、今の僕にそんなことまで宿題を出していた。
 なぜ売春行為は廃止されたのに、後を絶たないのだろうか。貧しさである。豊かであれば不倫行為で終わる。単純な事に過ぎない。浅木が体で金を集めていたと仮定して、その金の使い方を知れば、ぼくは許されても良いのではと思っていた。しかし、法律はそれを許さない。それなのに、はっきりと分かる売春行為でさえ絶てない。浅木は自らの体を張って、売春の原点の貧しさを訴えたかったのかもしれない。ぼくは浅木に会ってみたい気持ちになった。

作品名:蜜を運ぶ蝶 作家名:吉葉ひろし