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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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蜜を運ぶ蝶

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清水亜紀の紹介で、服部芸能事務所と正式に契約を交わした。と言ったところで、出来高制であった。モデルと言ってもさまざまである。浅木はファッションモデルを希望したがすぐになれるものではなく、当座の生活費稼ぎに、清水に勧められて写真集を出すことになった。セミヌードである。300部も売れれば良い方と思って初版は300部であった。書店でのサイン会では予想を超えて50冊ほど売れた。それには売り込みの戦略もあった。ポルシェをバックにした水着姿のポスターには、1冊で5分間のドライブデートが出来ますと書いてあったのだ。戦略は当たり、2000部ほどが1カ月余りで売れた。マスコミで話題になると、事務所は2冊目の写真集を企画した。バレーボールのボールを様々な表情で、持ち、抱き、打つ。それはスポーツとしての表情ではなく、要求されたのは色気であった。もちろん、売り込みの戦略は密着ボール運びであった。胸の間にボールを挟み、5メートルほど運ぶのだが、ボールが落ちてしまえばそこで終わりなのだが、浅木の体に触れる者がいた。浅木は笑顔でハグしたから、写真集は好調に売れた。
 人気が出始めたとき、浅木のレズが発覚した。悲しいことにマスコミに売ったのは、相手だった彼女であった。事務所はその話題を逆手にとって、レズの写真集を企画した。浅木はその事務所との契約を破棄した。無一文になったが浅木は晴れ晴れとした気持ちを取り返し悦びを感じていた。
 26歳の浅木は自分の運の悪さを感じた。嘆いたところで生きなければならなかった。履歴書に大卒と書くことは出来ても、その能力もなく、パソコンさえ満足に使えない自分が、死にたくなるほど惨めに感じた。幸いスポーツ用具販売の店に、バレーボールの選手としての経験で就職できた。しかし、給料は自分だけで精一杯であった。浅木は老い始めた母の事も心配になっていた。幸せになりたい。あぁ、誰もがその為に生きていながら、なぜ、幸せになれない者がいるのだろうか。

作品名:蜜を運ぶ蝶 作家名:吉葉ひろし