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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「父親譲り」 第十八話

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「笹川さん、このたびはお世話かけました」

「いいんですよ黒田さん、こちらが望んだことですから。今日は楽しみましょう」

彼は黒田と言った。年齢は沙代子と同じで50歳だ。
笹川や美津子の若さにちょっと恥ずかしさでも感じているのであろうか、タオルでしっかりと前を隠して湯船の方に向かっていった。笹川は軽くタオルを手にして歩いていただけだったので、湯船に入る時に女性たちの目にそれは入った。

「いいお湯だね~ホッとするよ」

「笹川さん、美津子さんとの婚約改めておめでとうございます」

「沙代子さん、ありがとうございます。お父様に気にいってもらえて嬉しかったです。黒田さんはまだお話されていないのですか?」

ちらっと黒田の顔見て沙代子が返事した。

「ええ、まだなの。私がお願いしてないから・・・」

「そうだったのですか。それは失礼なことを言いました」

「いえ、いいんです。私たちは今回の旅行を承諾するということで、帰ったら結論を出さないといけないと考えているんです」

「なるほど。私たちにお付き合いで来たのではないという意味もあるんですね」

「美津子さんには話そうと思っていたのですが、ちょうどよい機会なので四人でお話が出来たらと思っているんです。黒田さんもそれは承知です、ね?」

黒田は顔を縦に振った。

「ボクは沙代子さんのことが好きです。彼女に方に悩んでいることがあるのなら話して欲しいのですが、もしボクが亡くなった妻のことが忘れられないと思っているのならそれは違うんです」

「黒田さん、奥様のことを忘れる必要はないと思いますよ。胸の奥にしまっておかれればいいことです。そのことを解っていて沙代子さんは交際を承諾されたわけですからね」

「笹川さん、ありがとうございます。彼女は比べているんじゃないかと思っているようです。それもそういうことは無いんです」

「なら、問題はないじゃないですか、ねえ沙代子さん?」

「黒田さんは優しい方だから、本心でそう言われているのか解らないって感じるの。美津子さんのように手放しで喜べるっていう気持ちにはまだなれないのよ」

美津子は笹川を遮って沙代子に話した。