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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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比翼の鳥は囀りて

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誓い


 女王試験はそのままアンジェリークの勝利になる気配が濃厚となった頃。
 ルヴァは鋼の守護聖の執務室を訪ねていた。

「こんにちはーゼフェル。今いいですかねー?」
 ひょっこりと顔をのぞかせると、ゼフェルは荷物をまとめている最中だった。
 試験の終盤なので聖地に持っていくものなどを少しずつ整理するのだ。
「よぉ、珍しいな。散らかってるけど入れよ」
「この間はありがとうございましたー。ちょっとまたあなたの力をお借りしたくてですねー」
 懐から一枚の羊皮紙を取り出してゼフェルの前に広げる。
「私の絵なので分かり辛いかと思いますが、こういうものを作っていただきたいんです」
「ほー、なんか面白ぇ形だな」
 手描きされたデザイン画に素早く目を通す。
「宝石やパーツ類はこちらで手配していますので、加工をお願いしたくて」
「おう、材料あんならすぐ作るぜ、任せとけ。で、いつまでに間に合えばいい?」
「材料は明日の夕方には届けますので、木の曜日朝までにお願いできますか?」
「ん、わかった。あいつきっと喜ぶぜ」
 図面に描かれた絵に定規を宛がい、採寸した数字を手早く書き入れていく。
「えっ、あー、なななんのことでしょうかねー」
 途端に挙動不審になるルヴァを鼻で笑うゼフェル。
「誰宛かバレバレだっつーの。やるなーおっさん!」
 しどろもどろにとぼけてみせたものの、ニヤリと笑われて首まで真っ赤になるルヴァ。
「ったくよー、あいつ最初っからルヴァ以外視界に入ってねーんだもんなー」
 シャッシャッと軽快な音を立てて、紙の上を鉛筆が滑っている。デザインの歪みを修正しているようだ。
「え、そ、そうだったんですかー?」
 それは初耳だった。驚きでルヴァの瞳が見開かれる。
「だから、あいつが女王になるって聞いて驚いたぜ。てっきり、あんたと……」
 そこまで言いかけて顔を上げ、ルヴァへと視線を投げた。
「……迷ってはいたようですが、ね」
 一瞬だけ翳りのさした表情を、ゼフェルは見逃さなかった。赤いまなざしが真剣なものへと変わる。
「良かったのか、これで」
 この地の守護聖はいつだって自分より相手を優先させてしまうことを、彼は良く知っていた。だからこそ心配だったのだ。どこかで無理をしているんじゃないかと。
 だが予想に反して、ルヴァは晴れ晴れとした顔で告げた。
「良かったんですよ、これで。ちゃんと話し合って決めた道ですから」
「そっか、そんならいーけどよ。……泣かすなよ」
 アンジェリークのほうは彼のことを良き友人のような存在だと言っていた。その言葉に嘘偽りはないのだろう。
 だがゼフェルは────恐らく彼女には何も告げぬまま、見守ると決めたのかも知れない。
 ルヴァのまなざしも緩やかに、しかし真剣さを伴ってゼフェルを貫く。
「善処しますよ、一生ね」
 届けられることのない想いの分まで彼女を大切にすると、ルヴァは心に誓った。
 ゼフェルは安心したようにまた手元へと視線を戻した。
「ほんっと、未だにあんたのどこがいいんだかわかんねーわ。トロくせーしドジだし緑茶に煎餅だしよー。なのに毎っ回毎回、ルヴァ様かっこいい、素敵ーって目の前で言われてみろ、戦う気も萎えるぜ」
 勿論ゼフェルはルヴァの良さについて十分わかっている。幸せになって欲しいとも願っている。それでもなお複雑に入り混じる嫉妬と羨望を、彼はからかいの言葉の中へと沈めた。
「そ……そうだったんですかー。でっ、では先程の件、宜しくお願いしますね!」
 一体いつからそんな話になっていたのか気にはなったが、なかなかに酷い言われっぷりにこれ以上は藪蛇だと判断し、大慌てで自分の執務室へと戻ってきた。

作品名:比翼の鳥は囀りて 作家名:しょうきち