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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「化身」 第六話

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「そうか、先ほどの白鬚神社にこもった男が外に出てきたのは大晦日の前の日だと伝わっておる。何でも正月を前にして村には人が戻って来ているだろうと狙ったという事みたいじゃ」

「用意周到な奴ですね。火をつけたわが村の祖先は確かに悪いが、そもそもは身から出た錆。逆恨みに等しい行為だとも思えます。その時に死んだ娘の怨念と言うのは本当なのでしょうか?」

「さてな。今ではその男に憑りついたのは義仲と二男力寿丸だとも言われておる。そのすさまじい怨念が旅の男を鬼に変えたとも」

「村と何の縁もない旅の男が命をかけてまで娘の魂の叫び事を聞くのでしょうか?」

「何か大きな取引というか叶うことがあったのやもしれんな」

「大きな願い事が叶えられるという誘惑に負けたという事でしょうか?」

「そう言うことになるな」

「鬼は許嫁にこう言いました。娘の魂を見つけられたらそれを食べて永久に人として生きることが叶うと」

「執念じゃな・・・その男には何の謂れもないことじゃが、ここまで続けているのはある時に人に戻りたいと考えてのことだろう」

「自ら進んで鬼になったというのに、人に戻りたくなったと気が変わったという事でしょうか?」

「そこに何らかの約束事が見つかったのかも知れないが計り知れぬな」

「約束事・・・娘の魂を食べることで人に戻る。戻ったら何か約束が叶うと?」

「そこまでは推測の域を出ぬが、そう言う事であろうな」

作治は鬼が人になりたいと願っているのだとすれば自分がそれを叶える手伝いをすればもう村を襲ったりしないかも知れないと希望を持った。
何としても人として暮らしている男を見つけて話がしたいと思っていた。

その日から無理を頼んで作治は白鬚神社の主の所に泊まり、村中を探した。近隣の村へも足を運んだが男の姿は見つからなかった。
時は流れて夏を迎えた。さすがにもう村へ戻らないとみんなが心配する。
世話になった主に別れを告げて街道を引き返そうとしたとき、天に真っ黒な雲がかかり激しい雨が落ちてきた。

「いけねえ~こりゃ酷い雨だ」

そうつぶやいていると、街道を少し自分の村へ戻ったところに小さな民家があった。それは探していた時にはいつも留守をしていた家だった。
作品名:「化身」 第六話 作家名:てっしゅう