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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅱ

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(第四章)ハンターの到来(3)-極秘会議



「引き続き、第六セッションに入らせていただきます。当セッションの参加者及び内容に関する事項は、部外には一切……」
 日垣の声が聞こえた。誰もいなかったはずの部屋に、いつの間にか、複数の人間がいる気配がした。小さな話し声や椅子に座り直すような物音が聞こえる。
 美紗は、自分が部屋を出そびれたことを悟った。話が一区切りついたところで、外に出してもらえばいいだろうか。このままこのセッションの議事録取りをやってもいいが、それでも上官の了承を得ておく必要はある。
 美紗が顔を出すタイミングを図っていると、日本側の出席者を紹介していた日垣が、奇妙なことを口にした。
「先のセッションにも参加しておりました、こちらの藤原2等陸佐ですが、正式には、統合情報局第1部に属する『対テロ連絡準備室々長』です。先ほどは、便宜上、『内局調査課のオブザーバー』と申し上げましたが、彼が、我が国のテロ関連情報ネットワークの構築に携わる、実質上の責任者になります」
 人が椅子から立ち上がる音がした。美紗は、テーブルの下に座りこんだまま、簡単に挨拶をする男の声に耳を澄ました。確かに、先のセッションで聞いた覚えのある声だった。日本側の出席者が座っていたテーブルにその2等陸佐の名前を記した名札が置いてあったのも、記憶にある。四文字の氏名の上には、日垣が言ったとおり「内局調査課」という所属のみが付記されていた。
 便宜上異なる肩書を表記していたとは、どういうことなのだろう。そもそも美紗は、自分自身が勤務している統合情報局第1部に属するという「対テロ連絡準備室」という名前を、全く耳にしたことがなかった。

 日垣は、準備室長に続き、彼の配下にあるらしい三名の人間を紹介すると、その場にいない四人目について言及した。
「高峰3等陸佐は、現在は、対テロ連絡準備室と外部一般との連絡要員ですが、テロ問題担当の専門官として、情報ネットワーク立ち上げ後は、国外情報機関と非公式に連携する際の調整窓口の責務を担うことになります」
 美紗は、せっかく見つけたUSBメモリを取り落としそうになった。同じ「直轄ジマ」でいつも口ひげをいじっている高峰が、聞いたこともない部署に籍を置いていた。その事実が何を意味するのか、理解できなかった。