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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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絶対に幸せになんてなれない!

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かくして、主人公は幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。


「世界も救ったし、いやぁよかったなぁ」

主人公は財宝も持ち帰り、姫も助け出して
結婚もできてすっかり満足していた。


『幸せ値が低くなっています。
 これ以上は物語の結末が変更されてしまいます』


突然頭の中に声が響いてきた。

「物語の結末が変わるって……。
 それじゃ幸せに暮らせないってことか!?」

主人公は慌てて自分の生活を見直した。
幸せ値が低くなっているということは、なにか原因があるはず。

「……そうだ! 金だ!
 せっかく財宝を持ち帰ったのに少しも贅沢していない!
 きっとそれがストレスにつながっているんだ!」

財宝を持ち帰る前はあれだけ贅沢したいと思っていたのに、
取り戻すことばかりに目が行って
結局、生活は少しも変わっていないのが問題なんだ。

さっそっく、主人公は持ち帰った財宝で贅沢三昧を繰り返した。

「あはははは!! いやー幸せだ! 最っ高に幸せだ!」


『幸せ値がさらに低くなっています。
 これ以上は物語の結末が変更されてしまいます』


「えええ?! なんでだよ!!」

これだけ贅沢しているのに、幸せ値はまるで取り戻せない。
おそらく原因はこれじゃなかったんだ。

まして、無理して自分の身の丈に合わない生活にしたことで
かえって幸せ値が低くなってしまったんだ。

だとしたら原因は……。


「そうか! 全然いちゃいちゃしてない!!
 きっと原因は家族がいないのが問題なんだ!!」

すぐに贅沢な暮らしを辞めて家族を大事にする生活に切り替えた。
やがて子供も生まれ、家族だんらんを多くとるようにした。


「いやー幸せだなぁ! 何気ない日常の繰り返しが、
 こんなにも暖かいなんて! すごく幸せだぁ!」

天に聞こえるように、主人公は大きく宣言した。
しかし。


『幸せ値がますます低くなっています。
 これ以上は物語の結末が変更されてしまいます』


「や、やっぱりね!!」

主人公もうすうす感づいていたが、
言葉とは裏腹に自分の不幸せを実感し始めていた。

世界を救ったので家に長くいると嫌味を言われ、
一人にしてほしくても子供の世話をしなくちゃいけない。

「ち、ちくしょう! どうすれば幸せになれるんだ!」


贅沢もした、家族もできた。
これ以上どうすれば幸せに近づけるんだ。

趣味も増やした、好きな仕事にもついた。
自分が好きだと思えることはすべてやっていたが……。


『幸せ値が一定値を下回りました。
 物語の結末を変更いたします』

ついに物語の結末が変更されてしまった。




絵本を読み聞かせていた大人は、最後の結末を読んで本を閉じた。

「めでたしめでたし」

「パパ、この本変だよ。
 幸せに暮らせないって変じゃない?」

子供は絵本の結末に違和感を感じた。

「そうだね、でも、絵を見てごらん?
 とっても幸せそうじゃないか?」

絵本の挿絵に書かれている主人公は、
苦労をにじませながらも幸せそうな顔をしていた。

「きっと幸せを追い求めるよりも、
 不幸せを大事にしながら暮らす方がいいんだよ」



"かくして、主人公は 不幸せ に暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。"