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機巧仕掛塔ラステアカノンのトルティーネ

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太陽片〜Royal十Star


 赤、青、黄、白。
 小さなもの。大きなもの。
 強い光を放つもの、弱い光を放つもの。
 遠く、どこまでもどこまでも広がる宇宙に、ありったけの宝石を散りばめたような光景でした。
 満天の星空の下、黒いシルエットになってひとりと三匹の後ろ姿が浮かび上がります。四つのそれは仲良く並んで座っていました。
「あれはぁ〜、じゃあーぴぃ座!」
「ぴっぴぃ!」
「この前は違う星を指していたな・・・」
「え〜ウソぉ〜。まぁ良いじゃん〜」
 一番背の高い影、トルティーネが上に手を伸ばします。適当な星と星を結び、新しい星座を次々に作っていました。
 ────ここは天球宮(てんきゅうくう)。
 太陽と月と星の巡りを、目の当たりに出来る空間です。
「今日もまた、新たな星座をたくさん作ってしまったぁ!百はいったね〜!」
「いや、十も作ってないぞ」
 トルティーネは満足そうに伸びをしながら後ろに倒れ、芝生の上に寝転がりました。
 深緑の瞳が見上げた空にひとつ、流れ星が落ちていきました。
 何百何千何万という瞬きが目映く光る、美しい夜空。
 しかしこの空は、本物の“空”ではありませんでした。────正確にはラステアカノンの内部に映し出された、宇宙の映像です。色とりどりの輝く星達も、濃淡のついた藍色の深みも、全ては丸いドームに映されたどこか別の場所の風景でした。
 機巧仕掛塔ラステアカノンは内部で完結し、外界に繋がる術はありません。毎日どこからともなく流れ着く物語の“パーツ”以外は、何ものも出入りは出来ないのです。
 それはトルティーネも例外ではありません。この“どこまでも本物に見える映像の空”しか知らず、まるで透明な天球儀の内側から、描かれた星空を見上げているようです。
「あ、向こうの空が明るくなってきた〜」
「日の出か」
 太陽もこの天球宮の“空”に上がることもあれば、また別の庭や場所、壁面に昇ることもあります。時間も決まっているわけではなく、全てはラステアカノンの気まぐれです。けれど、塔内を照らす大切な光源の一つでした。
「なんだか、暗いね〜?」
 しかしトルティーネの言う通り、今昇ってきた“太陽”の光は弱々しく、辺りは微かに白んできた程度です。
「どうかしたのかなぁ?」
「くぅ〜ん・・・!」
「あ、しっぽ振ってる〜。もしかして“パーツ”出てきたぁ〜?」
 トルティーネは右に寝返りを打つと、隣にいたいぬの尻尾にわざと顔を当てて、くすぐったそうに笑います。
 トルティーネが唯一、いぬの主張がわかるのがこの“パーツ”を感知した時です。といっても、実際にしっぽが揺れているのでわからない方がおかしいですが。
「やっぱあの変な“太陽”かなぁ?いつもの太陽じゃないのかも?ちょっと行ってみよっか〜!」
 よっこいせっと起き上がったトルティーネは顔や服に芝生をつけたまま、その“太陽”が昇ってきた方角を目指して歩き出しました。
 ぴぃはトルティーネの頭の上に飛んでいき、いぬはいつも以上に震えて動きが鈍く、それに合わせたうっさんも遅れて続きます。
 近付いても近付いても、そのぼんやりとした輪郭がクリアになることはありませんでした。朝靄にぼかされた光のように淡く、天頂では星の灯りの方が輝きを増しています。
 どれくらい歩いたでしょうか。“太陽”が目線より上の高さまで昇り、近くに見えた山々が意外と遠いのと同じように、この天球宮の広さを改めて痛感し始めた頃。
「・・・・・?」
 トルティーネとぴぃよりもかなり後方。
 あまり足の進まないいぬに付き添い、立ち止まっていたうっさんが顔を上げた時、その異変に気が付きました。
「待てトルティ!屈め!」
「ふぇ?────うごっ」
 うっさんの大声にトルティーネが振り向くより速く、それは起こりました。
 トルティーネ達が目指していた“太陽”が突如、一際大きな光を放ったと思った瞬間、強烈な閃光が辺り一帯を塗り潰し、内腑を圧迫する凄まじい轟音が炸裂しました。
「「────?!」」
 うっさんの声に真っ先に反応していたのはぴぃでした。トルティーネの帽子の上でトランポリンで跳ねるようにジャンプをして、その質量からは考えられない重量を纏い落下しました。その衝撃が脳天に直撃し、強制的にしゃがんだ(潰れた)トルティーネの、一瞬前まで顔があった場所を拳大の破片が隕石のように貫きます。
 一切の色彩と音が奪われ、この天球空自体がまるごとどこかに吹っ飛んでしまったのかと錯覚する余韻の後、
 ────やがて、白一色だった視界が変色し、少しずつ元の色を取り戻していきます。
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