ロリータの殺意
ヒロイン
「私はなんて不幸な女だろう」
それが、A子の口癖だった。
中学時代のことである。A子は、修学旅行の前夜を眠れずに過ごしていた。当時十四歳。そのころには自分が不運に好かれていることを自覚していたので、旅行のことが不安だったのだ。
A子の不安を裏づける出来事は、過去にたくさんあった。
幼稚園のころに、幼女趣味を持った男に誘拐されそうになった。小学生のころに、学校で飼っていたウサギや鳥たちが虐殺された事件の濡れ衣を着せられた。これらはごく一部で、他にも小さなものから大きなものまで、さまざまな不幸に巻き込まれてきた。
結果的に、A子の悪い予感は的中した。三台に分けられたバスのうち、一台が事故を起こした。生徒一名が死亡、三十名以上が重軽傷を負った。もちろん修学旅行は中止になった。
「私の不幸体質のせいで、人が死んでしまった……」
ショックで、A子はしばらく家から出ることができなくなった。ようやく学校に復帰したときには、高校受験の季節だった。
遅れを取り戻しつつ必死に勉強した結果、A子は第一志望の高校に合格した。
もう他人とは関わらないようにしよう。そう心に決めた彼女だったが、そこで運命的な出会いを果たす。
同じクラスになった、B子だ。
A子には友だちを作るつもりはなかったのだが、B子とは不思議なほど気が合った。二人でいろんなことを話した。いろんなところへ遊びに行った。そうして二人のあいだで友情と呼べるものが形成されたとき、A子は自らの不幸話を打ち明けてみる気になった。
「かわいそうに。大変だったのね……」
B子は真剣に話を聞いてくれた。