ロリータの殺意
愛の賛歌
「愛しているよ」
彼氏が言った。
「愛しているわ」
彼女が応えた。
男女関係になってからというもの、彼らはこのやりとりを毎日のようにしていた。だが、今日は少し違った。彼氏のほうが、ある「疑い」をベッドに持ち込んでいたからである。
僕は彼女を愛していて、彼女も僕を愛してくれている。それは分かっている。でも、僕が彼女を愛する気持ちは大きすぎるのではないだろうか。彼女の愛では、僕の愛にはかなわないのではないだろうか。つまり、おたがいの愛が釣り合っていないかもしれない。そういった疑いだった。
「ねえ、どうかしたの?」
彼女が言った。
「急に黙っちゃって。何を考えているの?」
「どういうふうにして君に愛を伝えようかと考えていたんだよ」
「そんなこと、簡単よ。ただ『愛している』と言えばいいの」
「僕は君を愛している」
そのとき彼女は、彼の様子がいつもと違うことにやっと気づいた。
少ない言葉で気持ちを伝えることを「美」とする彼が、余分な言葉を付け足したのが気になった。
いいえ、それでもかまわないの。
彼女は全身に広がっていく幸福にすべてを委ねた。幸せは、肉体で感じるのがいい。幸せを脳で考えようとすれば、いずれ論理がすべてを台無しにしてしまう。
計算や論理なんて、私には必要ない。どんなときも自分の味方をしてくれるのは理屈じゃなく、愛なのだ。