ロリータの殺意
起承転結
【起】
目覚まし時計の音で、カガワは目を覚ました。
1Kマンションの一室、日当たりの良い部屋だった。
ベッドから起き上がる。カーテンを開き、全身に朝日を浴びた。
台所へ行き、電気ポッドに水を入れる。湯を沸かしているあいだにトイレへ行き、小用を済ませ、手と顔を洗った。
ナイトテーブルに置いてあった通信端末を手に取り、インターネットにつなぐ。ニュースをチェックするためだ。
西の地方でコンビニ強盗があり、抵抗した店員がケガを負ったらしい。あの有名な映画俳優が不倫したらしい。あの上場企業の赤字がずっと続いているらしい。
電気ポッドが軽快な電子音を鳴らした。湯ができたという合図だ。食器棚からカップを出す。インスタントコーヒーの粉を小さじ二杯。味にこだわりはない。十年続いている習慣を壊す理由がなかった。
食パンとサラダで朝食を済ませる。身支度をし、家を出た。駅に着く。ちょうど良いタイミングで電車が滑り込んできた。
カガワは後ろから三番目の車両に乗る。座席の端に腰を下ろした。
【承】
「よう、久しぶりだな、カガワ」
突然声をかけられて顔を上げると、隣に知り合いが座っていた。ビジネス仲間のトオダだ。背広を着ているが、会社に出勤するわけではない。朝の通勤電車内で目立たないために背広を着ているのだ。
「最近はどうだ。営業は大変か」